カーボンニュートラルを実現させるための住宅とは?家づくりのポイントを解説
2024.07.17
2023.12.27
現在、持続可能な社会の実現に向けて、さまざまな取り組みが進められています。
「SDGs」や「持続可能な家」と関連して「カーボンニュートラル」という言葉もよく取り上げられますが、近年、世界各国でカーボンニュートラルの取り組みが推進されています。
その実現のためには、住宅から大量に排出される二酸化炭素を含めた温室効果ガスを削減し、「エネルギーのかからない家」にすることが求められます。
今回はカーボンニュートラルの実現に向けた家づくりにおける取り組みを解説します。
この記事を読んでいただきたい人
- カーボンニュートラル・脱炭素について知りたい人
- これから建てるべき持続可能な家づくりについて知りたい人
- 光熱費のかからないお財布に優しい家にしたい人
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1.カーボンニュートラルとは?注目されている理由をわかりやすく解説
「カーボンニュートラル」とは「温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること」です。
言い換えると、温室効果ガスの排出を全体として実質ゼロにするというものです。
図:カーボンニュートラルのイメージ
排出せざるを得なかった温室効果ガスについては、同じ量を森林の管理などで「吸収(または除去)」することで差し引きゼロを目指します。
引用:環境省 脱炭素ポータル
2020年10月、政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言。120以上の国と地域が「2050年カーボンニュートラル」という目標を掲げています。
なぜ「カーボンニュートラル」が注目されているのか?
カーボンニュートラルはなぜ注目・必要とされているのでしょうか?
それは、CO2などの温室効果ガスが原因で引き起こされる地球温暖化を防ぐためです。
地球温暖化が進むと、生態系や自然災害、産業・経済活動などに大きな悪影響が出ると予想されています。
カーボンニュートラルの実現はこのような問題の防止に欠かすことができません。
誰もが安心して暮らせる社会を実現するためには、地球温暖化の原因となる温室効果ガスの排出量を抑えることが必要なのです。
「カーボンニュートラル」と「脱炭素」の違い
カーボンニュートラルと関連して「脱炭素」という単語もよく使われます。
「脱炭素」には、二酸化炭素に焦点を当て「二酸化炭素(CO2)の排出を実質的にゼロにする」といったニュアンスがあります。
一方、「カーボンニュートラル」は二酸化炭素を含むメタン・フロンガスなどの温室効果ガスの排出量・吸収量をプラスマイナスゼロにするといったニュアンスがあります。
「脱炭素」には明確な定義はなく、ニュアンスこそ少し異なるものの、「カーボンニュートラル」と同じ意味で使われることが多いです。そのため、「脱炭素」という単語が実質的にカーボンニュートラルを表しているケースもあります。
2.LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)とは?
ここまでカーボンニュートラル・脱炭素の取り組みの重要性について解説しました。
温室効果ガスのひとつであるCO2排出量の削減は、重要な政策課題のひとつです。
CO2の大部分は住宅からも大量に排出されているという現状があり、今後も低炭素化の取り組みを強化していく必要があるのです。
そこで、次世代の環境負荷を減らす住宅として「LCCM住宅(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス住宅)」が注目されています。
LCCM住宅とは、建設時から廃棄時までの住宅の一生涯において排出されるCO2収支をマイナスにする住宅のことです。
居住時はもちろん、材料となる木材の伐採から建材の製造を含めた建設時、そして解体・廃棄時においてできるだけCO2排出量の削減に取り組み、かつ太陽光発電などで再生可能エネルギーを創出することにより、建設から廃棄までの生産(ライフサイクル)を通じた建物のCO2収支をマイナスにします。
これまで日本では「省エネ基準」「ZEH」など、さまざまな省エネやCO2に関する政策を行ってきましたが、「LCCM住宅」はこれらをより強化した政策と言えるでしょう。
参考:国土交通省(ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)、LCCM(ライフ・サイクル・カーボン・マイナス)住宅関連事業(補助金)について)
脱炭素化に向けた住宅性能レベルの引き上げ
図:脱炭素化に向けた住宅性能レベルのイメージ
国は2025年度に現在の省エネ基準(断熱等性能等級4)の新築住宅に対する適合を義務化し、2030年度以降新築される住宅についてはZEH基準の水準の省エネ性能の確保を目指すとしており、2050年には住宅ストック(既存住宅)の平均でZEH水準の省エネ性能が確保されることを目標にしています。
そして最終目標が「LCCM住宅」になります。
ZEHや省エネ基準については下記の記事で解説していますので、ぜひ参考にしてみてください!
これからのスタンダードは「持続可能な家づくり」
これからは省エネ・快適であることは大前提として、「持続可能な家」を建てることが求められています。
持続可能な家にするためには、先述した通り、地球温暖化の原因となっているCO2を削減するために省エネ性を高め、環境負荷の少ない再生可能エネルギーを活用していく必要があります。
また、長く健康で暮らせる家であることも大切な要素です。そのためには耐久性や耐震性を高め、メンテナンス性や可変性にも考慮した、次世代に住み継げる長寿命な家である必要があります。
そのような家を実現するためのポイントについては、下記のコラムで解説していますので、ぜひ参考にしてみてください。
快適で省エネ、安全、長寿命な家を実現するために必要な要素とは?
3.カーボンニュートラルの実現に向けた住宅・建築物の取り組み
現在、政府ではカーボンニュートラルの実現に向け、具体的な取り組みがまとめられています。
以下がカーボンニュートラルの実現に向けて重要な項目になります。
①省エネ性能の底上げ
カーボンニュートラルの実現に向けて、省エネ基準(断熱等性能等級4)への適合義務化が挙げられます。これまでは省エネ基準をクリアする義務がなかったため、冬寒く夏暑い、光熱費のかかる家が大量供給されてきたという背景があります。
省エネ基準(断熱等性能等級4)は、快適で省エネな暮らしをするための断熱基準としては残念ながら低いのですが、まずはこの最低ラインをクリアすることが求められます。
また、 断熱施工に関する未習熟な事業者の技術力向上の支援などを行い、国全体として底上げしていくという方針です。
②省エネ基準の引き上げ・ZEHやLCCM住宅の普及
省エネ基準の引き上げも予定されています。
先述した通り、現在の省エネ基準(断熱等性能等級4)は快適で省エネに暮らすための基準としては低いです。
この状況を変えるべく、2022年4月に等級4を上回る「断熱等性能等級5」(ZEH水準)を新設し、同年10月にはより断熱性能の高い「等級6」「等級7」を新設しました。
また、遅くとも2030年までには適合義務化の基準を「等級4」から「等級5」に引き上げることが予定されています。
併せてZEHやZEH+、LCCM住宅などの普及を促進していくことも求められています。
③省エネ性能表示の取組
2024年4月1日より「建築物の販売・賃貸時の省エネ性能表示制度」が施行されます。
これにより、新築建築物の販売・賃貸の広告等において、省エネ性能の表示ラベルを表示することが義務化されます。
住宅の省エネ性能を表示することで、消費者等が購入・賃借する際に建築物の性能を把握できるようになります。
④既存住宅の省エネ改修
国や地方自治体などが、住宅の計画的な省エネ改修の対策を行います。
既存住宅は新築と比べると、やはり断熱性能をはじめとする性能が低く、省エネに暮らせすことができる家とは言えません。
安全に暮らすための耐震改修と併せて、断熱改修のリノベーション、建て替えの提案や普及を行います。
⑤太陽光発電システムの普及・継続的な金銭面の支援
断熱性能の向上と省エネ性の高い設備の導入によりエネルギーを削減することと並行して、太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーをうまく使っていく必要があります。
太陽光発電システムの普及や将来における設置義務化も視野に入れ、対策を進めています。
また、ZEH等への補助金、融資や税制の充実的な支援なども引き続き行っていく予定です。
参考:経済産業省
4.カーボンニュートラルのための住宅を建てるメリット
カーボンニュートラルのために建てられる住宅は、地球環境に優しいだけでなく、さまざまなメリットがあります。
以下に大きな3つのメリットを解説します。
①光熱費のかからない家になる
カーボンニュートラルのための住宅はエネルギーのかからない家です。
つまり、少ない冷暖房費でも十分に賄うことができる「光熱費のかからない家」になるということです。
今後、ますます光熱費は値上がりし、家計の負担となることが予想されています。
光熱費を抑えられる家づくりは、経済的負担を考えてもこれからの家づくりにおいて必須と言えるでしょう。
②一年中住み心地のよい快適な家になる
高気密高断熱でつくられるため、冬暖かく夏涼しい、一年中快適な家になることも大きなメリットです。
こういった家では室温の温度差がなく、ヒートショックなどの心配もありません。
図:高気密高断熱な家をサーモグラフィで撮影したもの。どの箇所も温度が均一であることがわかる
また「寒さは万病の元」と言われるぐらい、冬の寒さはさまざまな健康被害を引き起こしますが、常に暖かい室温に保たれた家なら、健康に暮らすことができます。
これからの家づくりに必要不可欠な断熱性能と気密性能についての詳細は、下記のコラムを参考にしてみてください。
③補助金や税制優遇などを受けられる
条件に該当するような住宅を建てると、補助金や税制優遇を受けることができます。
現在もZEHや長期優良住宅の認定などを取得すると、補助金や住宅ローン控除などの優遇があります。
カーボンニュートラルは国として推進している政策なので、今後も引き続き、補助金などの支援が行われることが期待されます。
5.まとめ
本記事では、カーボンニュートラルの実現に向けた住宅の取り組みや、これから建てるべき家のポイントについて解説しました。
- カーボンニュートラルとはCO2などの温室効果ガスの排出量と吸収量を均衡させること
- 政府は2050年までにカーボンニュートラルを目指すことを宣言
- カーボンニュートラルは、CO2などの温室効果ガスが原因で引き起こされる地球温暖化を防ぐため必要とされている
- LCCM住宅とは、建設時から廃棄時までの住宅の一生涯において排出されるCO2収支をマイナスにする住宅のこと。次世代の環境負荷を減らす住宅として注目が集まっている
- カーボンニュートラルに向けた住宅は地球環境に優しいだけでなく、省エネ・快適性に暮らせるなどのメリットがある
「家づくり学校」では、カーボンニュートラルやLCCM住宅をはじめとする、これからの時代において必要とされる「持続可能な家づくり」についてレクチャーしています。
また、そのような家づくりに取り組んでいる信頼できる住宅会社の提案や紹介も行っています。
「後悔のない家づくり」のためには、まずは家づくりについて知ることが大切です。
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