親の土地に子どもが家を建てるときにはここに注意!名義変更、贈与税などチェックポイントをまとめました
2024.06.26
2023.08.21
親の持っている土地に家を建てれば、土地を購入する必要がなくなるため費用の負担は大幅に軽減できます。しかし、その分注意しなければならない税金等の重要ポイントがいくつかあります。後々のトラブル回避のためにもしっかりチェックしておきましょう!
親の土地に子どもが家を建てるといった場合、次のようなケースが考えられます。
- ①土地の名義は親のまま変更しないで、子どもが家を建てる
- ②土地の名義を親から子どもに変更して、子どもが家を建てる
実は、どの方法を選ぶかによってかかってくる税金等が違ってきます。
①土地の名義は親のまま変更しないで、子どもが家を建てる
名義が親のままということは、つまりその土地の名義人の親から土地を借りて子どもが家を建てるということになります。そのように土地を借りる場合、借り方にも「無償で借りる」ケースと「有償で借りる」ケースがあります。
⭐親の土地を無償で借りる
一般的に土地を借りる場合は賃借料を支払いますが、親子間では支払われるケースは少ないかと思います。このように無償で土地を使わせてもらうことを「使用貸借」といいます。
✅個人間(親子間を含む)での「使用貸借」の場合、使用中は特に税金は発生しません。
✅その後、親が亡くなり土地を相続する際に相続税の対象となります。
※無償で借りていた場合、有償での借地のように評価額が下がることがないため相続税が高くなる可能性があります。
⭐親の土地を有償で借りる
内容によって、贈与税・所得税・住民税などが発生する可能性がある。
例えば、家を建てた子どもが、親に気を使って通常の家賃相当の地代を支払った場合、賃貸借となり「贈与税」が発生する可能性があります。ただし支払う地代が固定資産税程度の金額であれば、地代を支払ったとみなされず贈与税は発生しないことも・・・?
また、権利金(借地権を設定するときに借主から貸主へ支払われる金銭)と地代を支払う場合は、贈与税の心配はありませんが、これらのお金は親の収入となりますので所得税や住民税の負担が増えることになります。
※有償の賃貸借で地代の授受があった場合、借地権が発生するため、借地権の分だけ相続税は安くなる可能性がでてきます。
う~ん、かなりややこしいですね?
その他にも親の土地を借りて家を建てた場合には注意する点がいくつかあります。
⭐住宅ローンを利用する場合の注意点
・親の土地に担保設定が必要となるケースがある
※既に親の土地が担保に入っている場合は、融資が通らないので要注意
・融資条件によっては、親が連帯保証人になることが求められることもある
いずれにしてもこういったケースの場合、万が一、子どもが住宅ローンの支払いができなくなったときは、その影響が親にも及びます。借入に関して無理は絶対に禁物です!
⭐親の家と同じ敷地内に子どもが家を建てる場合
・敷地の「分轄」または「分筆」が必要
ひとつの敷地にはひとつの建築物しか建てられないという建築基準法に則ったものです。
分割:登記の変更はしない。建築基準法の基準を満たせるように敷地を分けること。
分筆:登記上の手続き。元の敷地を別々の土地となるよう分けて登記すること。
✅それぞれに注意するポイントがあります。
※分割はあくまで建築確認上の分割ライン
そのため、担保としては親の家が建っている敷地も含めた土地全体に設定されることになりますので注意が必要です。
※分筆の場合、費用も時間もかかります。
分筆には土地測量や境界確定、登記申請などの複雑な手続きが必要となります。そのため土地家屋調査士に依頼するケースがほとんどです。費用は状況によって変わりますが、数十万円から100万円以上になることも
また、期間も早ければ2週間程度で完了するケースもありますが、長くなれば4か月以上ということもめずらしくありません。
ただ、分割とは異なりまったく別の土地になるため、担保としては子どもの土地だけに設定することが可能です。
親の家が建っている敷地の一部に子どもが家を建てる場合、手軽さや費用面から「分割」を選択する方が多いようです。
土地の名義を変更しないで子どもが家を建てる場合の重要注意ポイント
★相続トラブルが発生する可能性がある
★相続人が複数いた場合、必ずしも自分がその土地を相続できるとは限らない
✅他の相続人(兄弟姉妹など)がいる場合は、相続トラブル回避のための事前の対策が必要!
・遺言書を書いてもらう
・平等に相続できるような財産構成にしておくなど
親の土地に家を建てる(=親から土地を借りて家を建てる)場合、住宅ローンの利用も含めてまずは親子でしっかり話し合ってください!!さらには、将来の相続も関わってきますので、親族間での話し合いも重要になってきます。できれば、相続を前提に考える場合は専門家にご相談されるとより安心です。
土地の名義が親であれば、
土地にかかる固定資産税は親が納税
家屋にかかる固定資産税は子どもが納税
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②土地の名義を親から子どもに変更して、子どもが家を建てる
家を建てるために土地の名義を親から子へ変更する場合には「贈与=金銭を受け取らずに不動産を引き渡すこと」と「売買=金銭を支払って不動産を取り引きすること」という方法があります。
⭐親から子どもへ無償で土地を譲った場合
土地の相場価格(=時価)全額を贈与したものとみなされます。そのため、子どもに「贈与税」が課税されます。
⭐親から子どもに土地を売却した場合
親が子どもに土地を売るとなった際には、通常の相場価格(=時価)より低い金額で譲り渡すケースが多いのではないかと思います。もし、このように時価よりも安い金額で譲った場合は、時価との差額について贈与されたとみなされる「みなし贈与」となり、譲った価格と時価との差額に「贈与税」が課税されます。
みなし贈与の判断基準は法律などで決められているわけではないため、税務署が個々で判断することになります。
✅贈与税の税率は相続税の税率に比べると高い??
贈与税の特例税率
※直系尊属(父母)から子ども(贈与を受けた年の1月1日において18歳以上)への贈与に対して適用される税率
相続税の税率
また、贈与と相続を比べると控除額も全然違っています。
相続税の控除額:基礎控除3,000万円+(法定相続人の人数×600万円)
贈与税の控除額:通常 年間110万円
贈与をする場合には慎重に検討する必要がありそうです。
⭐その他にはこんな税金も必要
子どもが贈与で土地を取得した場合は、子どもに不動産取得税が課税されます。
・不動産取得税は固定資産税評価額の3%
※条件を満たせば軽減措置が適用され負担を減らすことができます。管轄の自治体に確認してみましょう。
土地の名義変更をする際には登録免許税が必要です。
※登録免許税は固定資産税評価額の2%
(普通の売買の場合の税率は1.5%:2023年3月31日までの軽減税率)
親が60歳以上であれば「相続時精算課税制度」が利用できます。
「相続時精算課税制度」を利用すれば、原則として60歳以上の父母または祖父母から、18歳以上の子または孫は2,500万円まで贈与税を納めずに贈与を受けることができます。その後、贈与者(父母または祖父母)が亡くなった時に贈与された財産の贈与時の価額と相続財産の価額とを合計した金額から相続税額を計算して相続税として納税することになります。
・2,500万円以内であれば贈与時に贈与税を支払う必要はない
・相続が発生した際の相続税まで課税を先延ばしすることができる
先ほども書きましたが、相続税は贈与税より税率が低いので節税となる可能性が高いと言えます。が、、やはり、いいことばかりではありません。利用することでのデメリットもあります。詳細はこちらをご覧ください。
※住宅取得のための資金の贈与には、贈与税を非課税にする優遇制度がありますが、土地の現物を贈与された場合は「住宅取得資金贈与の非課税」の対象とはなりませんのでご注意ください!
まとめ
親の持っている土地に家を建てることができれば、土地代金は不要となるため予算に余裕ができ、建物にしっかり費用をかけて理想のお家に近づけることができます。また、住宅ローンの借入額を抑えることもできるため、新築後の生活に余裕を持たせることもできます。そう考えると、利用できる土地があるのならぜひ検討したいところです。
親の土地に家を建てる場合、一般的には、将来土地を相続することを前提に親名義のまま使用貸借(=無償で借りる)で建てるケースが多いといわれています。どのような選択をするにしても重要なことは親子間あるいは親族間でしっかり話し合いをすることです。
■親の土地をどのような形で使用するのか
■どのようにして譲り受けるのか
後々のトラブル回避のためにも、十分に話し合ったうえで方針を決めるようにしていただきたいと思います。