【耐震あれこれ】旧耐震?新耐震?2000年基準?
2022.10.09

住宅の耐震性は、地震が多い日本において非常に重要な指標です。ただし、新築以外(中古住宅など)の場合は建てられた時期で適用された建築基準法が異なり、大きく3つに分類されます。この記事では、建築基準ごとの耐震性についてご紹介し、注意すべき点などについて言及しています。
※出典:気象庁ホームページ「日本で地震が発生しないところはありますか?」
日本で地震が発生しないところはありません。小さな規模の地震は日本中どこでも発生しています。また、ある場所で過去に大きな規模の地震が発生していたとしても、地表に痕跡(活断層など)が残らないことがあります。このため「この場所は大きな規模の地震が絶対ありません」と言えるところはありません。
なので、家づくりにおいて「地震に強い(=耐震)」は大切な要素です。新築でなくとも、例えば中古住宅を購入したり、数十年前に建てられた実家をリフォームして活用する場合などでも、しっかりと耐震は意識していきたいものです。
耐震等級とは?
※イメージ
地震に対する建物の強度を示す、「耐震等級」。住宅の性能表示を定める「品格法」に基づいて制定されています。建物の耐震レベルによってランクが3段階に分かれており、地震が発生した際に、建物の倒壊・崩壊しにくさを示したものになっています。
耐震等級1は、数十年に一度発生するレベルの大地震でも倒壊・崩壊しない耐震性。耐震等級2は耐震等級1の1.25倍の強さになり、長期優良住宅の基準は現時点で(2022年7月)耐震等級2以上となっています。
そして、現時点での耐震レベルとして最も高いのが耐震等級3です。耐震等級1の1.5倍の耐震性を備えており、避難所レベルの強さになります。熊本地震では震度7の地震が立て続けに2回発生しました。1回目の揺れには耐えたけど、2回目で倒壊してしまった住宅が多くあった中、耐震等級3の住宅は2度の震度7に耐えていたことが分かり話題になりました。
新築する場合は、必要最小限程度の耐震性は担保されます。と言いますのも、1981年(昭和56年)6月1日に改正された建築基準法に定められている「新耐震基準」でもって、「耐震等級1」の取得が必須となっているからです。
しかしながら新築以外(中古住宅など)の場合は、そもそも建てられた時期によって耐震性に違いがあります。
・2000年(平成12年)6月1日以降に建築確認申請が行われた建物
⇒いわゆる「2000年基準」となり、「耐震等級1」以上が担保されています。・1981年(昭和56年)6月1日以降に建築確認申請が行われた建物
⇒いわゆる「新耐震基準」となり、理論上は「耐震等級1」以上が担保されていますが・・・ちょっと注意が必要なことがあったりもします(詳細は後述します)。・1981年(昭和56年)5月31日以前に建築確認申請が行われた建物
⇒いわゆる「旧耐震基準」となるので、ほとんどの場合で「耐震等級1」が満たされていません。
まとめると・・・「新耐震基準」と「旧耐震基準」で建てられたお家は、耐震性を確認する必要性が高いということが言えるかと思います。
特に「旧耐震基準」の物件については、大規模な地震が発生した時に倒壊などのリスクが高いということで、多くの自治体で「耐震診断」や「耐震改修」の補助金を出しています。
※2022年6月10日追記:
香川県でも「小豆島町」では「新耐震基準」の建物に対しても「耐震診断」や「耐震改修」の補助金が給付されるようです。
参考:小豆島町民間住宅耐震対策支援事業の募集
余談ですが隣県の徳島県でも、一部の市町村を除いて「新耐震基準」の建物に対する「耐震診断」や「耐震改修」の補助金が給付されるようです。また全国的にも「旧耐震基準」の建物に対してのみ補助金が出る自治体が殆どですが、耐震に対しての意識が高い一部自治体では「新耐震基準」の建物にも補助金を出しているところもあるようです。
「新耐震基準」で注意が必要な場合とは?
※イメージ
ただ、「新耐震基準」については耐震診断・耐震改修に関する補助金がありません。理由としては先にも述べたように『理論上は「耐震等級1」以上が担保されて』いるからです。
しかしながら、耐震に深い造詣がある建築のプロから、こういう話を伺ったこともあります・・・
●「新耐震基準」の建物は、キチンと建てられていれば確かに「耐震等級1」の強度がある。
●キチンと建てられた=中間検査も完了検査もキチンとすること(「検査済証」がある状態のこと)。
●ただ、2000年頃から新耐震基準の運用厳格化が始まるまでは、キチンとされてない(=「検査済証」がない)建物も少なからず見受けられた。
●なので、キチンとされてない建物だった場合は、「新耐震基準」でも「耐震等級1」の強度が担保されてない可能性も考えられる。
●無論、「検査済証」がないからといって「耐震性がない」とは断言はできない。結局は壁体の中を確認しないことには、結論を出すことができない。
まとめると・・・「新耐震基準」の建物でも「検査済証」がない場合、それの活用に際しては耐震性には殊更注意を払った方が良い、ということになりますでしょうか。
※耐震補強のイメージ
尚、耐震診断の費用はおおよそ10万円位が相場です。「旧耐震基準」の建物に関しては、自治体にもよりますが結構な額(香川県では9万円までの90%)が補助金として出ますので、まだの人は積極的な活用をお勧めしたいと思います。
耐震性能には「地盤の強度」も必要です!(2022/6/9加筆)
※地盤調査のイメージ
「新耐震基準」が厳格運用され始めた2000年、時を同じくして木造住宅ではその「基礎」についても構造強化が求められるようになりました。いわゆる「地耐力(建物の荷重に対する地盤が耐える力)」に応じた「基礎構造(べた基礎・布基礎)」とすることがルール化されたのです。
それにより事実上「『地盤調査』を行わないと住宅建築ができない」ことにもなりました。理屈としては以下の通りです。
①「地耐力」が不十分だと、それに起因して建物が傾いてしまう(地中に沈んでしまう)「不同沈下」が発生する
②「不同沈下」によって基礎や壁、柱や梁などにダメージが累積し、住宅に大きな被害を与えることにもなる
③そもそも「不同沈下」は、地盤の状態を顧みずに基礎工事を行ってしまうことで起こってしまう
④それを防ぐためには「地盤調査」を事前に行い、必要に応じて「地盤改良工事」を実施することが必要である
※軟弱地盤だと不同沈下が発生した場合、このように住宅が傾いてしまいます。
地盤改良工事の種類と予算感について(2022/10/9加筆)
※イメージ 不同沈下を防ぐためにも、しっかりと地盤改良は行いましょう!!
「地盤調査」を事前に行った結果、「地盤改良工事」の実施が必須になった場合。次いで気になってくるのが「どれくらいの予算が掛かるのか?」ということだと思います。
ただ一概に「地盤改良工事」と言っても、どのような工事を行うのか?によって金額は異なります。ここでは主な工法の種類と予算感について説明していきます。
表層改良工事
※イメージ
表面1~2m程度が軟弱地盤の場合に適している工法です。まず軟弱地盤の表面を「すき取り」してセメントを散布。それを地盤と混合&攪拌して、その後で転圧を行います。地盤の支持力を確保することで不同沈下を防ぐことができます。
価格目安:40万円程度 ※一般的な面積の住居の場合。立地によっても異なります。
柱状改良工法
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表面2~8m程度が軟弱地盤の場合に適している工法です。特殊な攪拌翼で地面を掘削しながらセメント系の固定化材などを注入し、柱状に固定化していく工法です。最終的には支持地盤まで強固な柱状の「地盤改良杭」を打ち込み、その上に建築する建物の沈下を防ぐ役割を持たせます。地盤補強工事の中では比較的多くされている印象がある工法です。
価格目安:60万円程度 ※一般的な面積の住居の場合。立地によっても異なります。
小口径鋼管杭工法
※イメージ
最後はコチラ。表面8m~それ以上が軟弱地盤の場合に適している工法です。先端に掘進刃を取り付けた鋼管杭を地盤中に回転して圧入していき、支持層まで到達させる工法です。杭を回転して圧入させるため他の工法よりも比較的振動や騒音が少ない、支持地盤が傾斜していても対応ができるなどメリットもありますが、「他の工法より施工費用が高い」というデメリットもあります。
価格目安:200万円程度 ※一般的な面積の住居の場合。立地によっても異なります。
まとめ
要するに「耐震性能」と一口にいっても、「構造物(住宅+基礎構造)」の強化だけでは不十分であり、「強固な地盤」がセットとなって初めて有効的である!とも言えます。
命を守るシェルターとしても大切な住宅の耐震性能。将来、長きに渡って子孫に受け継いでいくためにも、また、価値ある資産(不動産)として維持し続けていくためにも、お家づくり・リノベーションを考えられている方には、その辺りのことも改めて強く意識して頂きたいと思います。
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