パッシブデザインとは?メリット・デメリット、成功事例を紹介
2024.10.25
2023.11.06
「パッシブデザイン」という言葉を聞いたことがあるでしょうか?
パッシブデザインとは、自然の力を最大限に活用することで快適で省エネに暮らすための設計手法のことです。
光熱費高騰の影響もあり、これからの住まいには断熱・気密性能といった住宅性能を高めるとともに、パッシブデザインが不可欠になります。
今回は以下のポイントでパッシブデザインについて網羅的に解説します。
- パッシブデザインの設計手法やポイント
- パッシブデザインを採用するメリットとデメリット
- パッシブデザインが得意なハウスメーカー・工務店
- パッシブデザインに住んでみての感想や口コミ
- パッシブデザインで建築された事例
本記事は、累計25000組以上の家づくりをサポートさせていただいた「家づくり学校」が執筆しています。
家づくり学校では、パッシブデザインをはじめとした家づくりの基本知識や予算設定のコツ、信頼できる住宅会社・工務店の見極め方などを出版社ならではの公平かつ中立の立場から個別相談やセミナーを通してレクチャーしています。
ご利用はいずれも無料ですので、注文住宅を建てることを検討されている方は、ぜひ一度ご相談くださいませ。
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この記事を読んでいただきたい人
- パッシブデザインの基本的な情報が知りたい人
- 快適で省エネな家を建てたい人
- これから必須となる家づくりの常識を勉強したい人
- パッシブデザインが得意な工務店・ハウスメーカーが知りたい人
1.パッシブデザインとは?
「パッシブデザイン(passive design)」とは、エアコンなどの機械に頼りすぎず、太陽の熱や光、風といった自然のエネルギーを最大限に活用して、快適で省エネな住まいを実現する設計手法のことです。
「パッシブ(passive)」とは直訳すると「受動的」という意味を持つ言葉です。人工的なエネルギー(機械)に頼らず、太陽や風など自然のエネルギーを受け取りやすいデザインで建築することをパッシブデザインと呼びます。
図:パッシブデザインの仕組み
例えば季節によって変わる日射角度や風の吹き方などを踏まえて建物や窓を配置し、窓の大きさや種類、軒の長さや角度などを設計します。
冬は日射を取り込んで室温を上げ、夏は日射の侵入を遮って室温の上昇を抑えます。窓を開ければ風が気持ちよく通り、照明なしでも昼間明るい室内を実現します。
そうすれば、冬温かく夏涼しい、一年中快適に暮らせる住環境となります。
また、冷暖房機器や照明機器の使用エネルギーを最小限にでき、電気やガスの使用量を減少させるため省エネな家となり、光熱費負担も抑えることができます。
光熱費が急激に高騰している現在、「持続可能な家づくり」としても注目を集めています。
パッシブデザイン住宅は、建物の外皮計算で算出される「外皮平均熱還流率:UA値」、「暖房期の平均日射取得率ηAH(イータ・エーエイチ)値」、「冷房期の平均日射取得率:ηAC(イータ・エーシ)値」といった「建物全体で熱がどれだけ逃げたり、入ったりするか?」という数値を根拠に設計されます。
パッシブデザインの具体的な設計方法については、後述の「2.パッシブデザイン5つの要素」で解説しています。
パッシブデザインの細かなシミュレーション
先述した通り、パッシブデザインとは「太陽の熱、光、風などの自然のエネルギーを最大限に活用した設計手法」を指します。
日射量や日照時間、風量や風向などは地域や地形ごとに条件が異なるので、気象庁のデータなどに基づき、建築のシミュレーションを行います。
データを読み解くことで、土地の条件に合ったパッシブデザイン住宅を建てることができます。
その地域の風土を理解することもパッシブデザインに欠かせません。
ドローンを活用したシミュレーション
ドローンによる空撮をもとにパッシブデザインのシミュレーションを行う会社もあります。
写真:地形をドローンで空撮する様子/ホームクリエたくみ
写真は東広島市でパッシブデザイン住宅を手掛ける「ホームクリエたくみ」の事例です。
ドローンで計測することでリアルな敷地条件をパソコン上で3Dで再現。周囲の建物や樹木などが作る影を一年を通して時間ごとに確認しています。
これにより、室内の日光の入り方を細かくシミュレーションした上で建物を設計しています。
図:3Dシミュレーション画像
写真:完成した建物
上の図は設計段階での3Dソフトの画像、下の図は実際に完成した建物の写真になります。
比べてみると、実際の影と3Dでシミュレーションした影の落ち方がほぼ同じであることが分かります。
事前に細かく計測・検証しておくことで、土地の条件を最大限に生かして、快適で省エネに暮らせる家を設計しています。
参考:ホームクリエたくみ
アクティブデザインとの違い
パッシブデザインと対照的な設計手法として「アクティブデザイン(active design)」があります。
アクティブ(active)は直訳すると「能動的」という意味を持つ言葉で、パッシブ(passive)「受動的」の対義語になります。
パッシブデザインが自然のエネルギーを活用して快適で省エネな家を実現させるということに対し、アクティブデザインは最新の機械や設備を利用してエネルギー利用の最適化を目指します。
具体的には以下のような設備を取り入れます。
- 太陽光発電システム
- 蓄電池
- エコキュートなどの高効率給湯機
- 高効率空調、全館空調システム
- HEMS(家庭で使用するエネルギーを節約するための管理システム)
このような設備の導入によって、アクティブデザインでもエネルギー消費を抑えることが可能になります。
★ポイント
- パッシブデザインは「自然の力」で省エネ・快適性を実現させる
- アクティブデザインは「機械の力」で省エネ・快適性を実現させる
アクティブデザインの注意点
アクティブデザインには注意点もあります。
一つ目の注意点は初期費用と修繕費用です。
最新設備の力を活用して快適・省エネ性を実現させようとするアクティブデザインは、設備の導入に多大なコストがかかります。
図:構造・断熱材・設備の耐用年数
また、設備の耐用年数は構造や断熱材と比べると非常に短く、平均で10年間。その度に交換・修繕費などのコストがかかってしまいます。
二つ目の注意点は快適性です。
どれだけ最新で機能性の高い設備を導入しても、住宅そのものの断熱・気密性能が一定水準に達していなければ、その効果は期待できず、「冬寒く夏熱い家」になります。
図:断熱・気密性能が低い家
また、性能の低い家では光熱費が多くかかってしまいます。特に冬の暖房費は高いので大きなエネルギーロスとなります。
現在、国では光熱費の値上がりやエネルギー不足など、住宅に関するさまざまな問題に対応するため、あらゆる政策を進めています。
その一つが「ZEH」の普及です。
ZEHとは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス」の略で、「断熱性能の向上」「省エネ設備の導入」「創エネ設備の導入」によって、年間の一次エネルギー消費量を正味ゼロ以下にする住宅のことです。
ZEHについての詳細は「後悔しない家づくりのポイント:「3.国の住宅政策を知る」もご確認ください。
ZEHの要件の一つに「断熱」がありますが、断熱性能とともに欠かせない「気密性能」です。壁の中に隙間がある状態では断熱材は本来の効果を発揮できません。
写真:断熱材が施工されている様子。スイッチボックスの周りに隙間がある。
実は、ZEHの定義には気密性能についての具体的な数値が示されていません。
つまり、快適で省エネな家を実現させるために推奨される気密性能の基準値を満たさずとも「ZEHの住宅」として認定することができます。
図:アクティブ技術重視のZEH(左)とパッシブ技術重視のZEH(右)
アクティブ技術に依存したZEHだと、太陽光発電システムや蓄電池によってエネルギーを作り出したり蓄電することができますが性能が低いので、その分多くのエネルギーがかかってしまいます。
一方、パッシブ技術重視のZEHは、必要なエネルギーが低いので、少ない設備で十分に賄うことができます。
図:パッシブデザイン+アクティブデザイン
パッシブデザインをベースに必要な量のアクティブ技術を導入することで、本当の意味で快適で光熱費のかからない「持続可能な家づくり」になります。
これから注文住宅を検討している方は、ぜひこれらのことを念頭に入れて計画を進めていただければと思います。
パッシブハウスとパッシブデザインの違い
パッシブデザインと似た単語に「パッシブハウス」があります。この二つの似ている単語は実は全く異なる意味を持ちます。
パッシブハウスには明確な基準があります。
◆パッシブハウスの基準
- 冷暖房負荷が各15kwh/㎡以下
- 一次エネルギー消費量(家電も含む)120kwh/㎡以下
- 気密性能として50㎩の加圧時の漏気回数0.6回以下※
※漏気回数0.6回以下=隙間相当面積(C値)=0.2c㎡/㎡以下となる。
住宅の断熱性能を示すUA値・Q値や、気密性能を示すC値だけで判断するのではなく、より厳格に、㎡あたりの年間の使用エネルギー量で判断されます。
基準を満たし、「パッシブハウスジャパン」からの認定を受けることによって初めてパッシブハウスと名乗ることができます。
これらの基準を満たすためには、高品質な断熱材を丁寧に施工する他、窓の枚数、給湯方法まで工夫する必要があります。
日本国内において、パッシブハウスの認定を受けた住宅会社はまだまだ少数です。
パッシブデザインはあくまでも、自然の力を活用して省エネ化を実現させようとする設計手法です。
★ポイント
- パッシブハウス…高い省エネ基準をクリアした認定住宅
- パッシブデザイン…自然の力を有効利用した設計手法
パッシブデザインを用いた住宅のことを「パッシブハウス」と表記しているケースもありますが、ご自身の家づくりで採用される際には誤用に注意していただければと思います。
パッシブハウスとパッシブデザインはこれからの時代、必要な考え方であることには変わりません。
なお、パッシブデザインをはじめとするこれから注文住宅を建てるなら知っておくべき情報については「家づくり学校」でアドバイザーが詳しくお伝えしています。
また、パッシブハウスやパッシブデザインによって建築された家を体感する機会も設けています。
こちらのパッシブハウスのルームツアー動画もチェック!
パッシブデザイン住宅の温熱環境は実際に体感してみることではじめて確認することができます。
家づくり学校のご利用はいずれも無料ですので、お気軽に個別相談やセミナー・見学ツアーへお越しください!
2.パッシブデザイン5つの要素
ここまでパッシブデザインの概要について解説しました。
本章ではパッシブデザインの具体的な要素である「断熱」「日射遮蔽」「通風」「昼光利用」「日射熱利用暖房」の5つの要素について詳しく解説します。
図:パッシブデザイン5つの設計種類
①断熱
写真:断熱材が隙間なく施工された様子
パッシブデザインのベースは「高断熱・高気密」です。外壁、屋根(天井)、床、窓の断熱性能を高め、建物の保温性能を上げます。
特に冬の暖房によるエネルギー消費量は多いので、冬暖かい家にすることは省エネにつながります。
②日射遮蔽
夏の涼しさと省エネを実現するためには、日射を窓から入れないことが不可欠です。
夏の昼間は太陽の高度が高いため、軒や庇をつけることで直射日光の多くを防ぐことができます。
窓の大きさ・種類・位置、軒や庇の角度や大きさなどは「冷房期の平均日射取得率:ηAC(イータ・エーシ)値」といった数値を元に設計されます。
日射熱をカットできれば、冷房に使うエネルギーを減らすことができます。
また、家づくりで重要な軒や庇についての詳細は『最近増えている「軒」のない家ってどうなの?―後悔しないために知っておきたいポイント』を参考にしてみてください。
夏は窓の内外から日射熱をシャットアウトする
冬には暖かさをもたらしてくれる太陽の熱ですが、夏には暑さの原因となります。
特に、断熱性能の高い家では室内に取り込んだ熱が逃げにくくなるため、日射をいかに入れないかが重要になります。
朝日が差し込む東側と西日が指す西側、北向きの窓は小さめにする、南向きの窓は軒や庇で日射を遮るとともに、カーテンや外付けブラインドなどの日よけを取り付けてコントロールすることが必要です。
写真:外付けブラインドが設置された家
効率よく日射を遮るには、窓の内側よりも外側からの方が有効的です。
日射を遮りつつ風を取り込めるルーバー雨戸などを設置すれば、気候や天気に合わせて開け閉めすることで日射をコントロールできます。
③通風
風を行き渡らせ、室内に溜まった熱を排出させるのに欠かせない「通風」。
地域ごとの風の向きを踏まえて建物内での風の動きを予測し、窓の配置や大きさを計画します。
風を呼び込む袖窓や出窓、ウインドキャッチャーを設置して風を取り込んだり、吹き抜けや高窓を設けて立体的に風を通すことで家の中に溜まった熱を排出するのも重要です。
④昼光利用
快適な暮らしに不可欠な「明るさ」。
昼間は照明をつけなくても過ごせるよう、リビングなど昼間に長く過ごす場所には2面以上に、それ以外の場所にも1面以上に窓を設けるのが基本です。
昼間に太陽光だけで明るい室内を実現することで照明エネルギーを削減することができます。
吹き抜けや天窓、高窓を設けて明るさを取り込む、中庭をつくる、欄間や透明・半透明の室内ドアを採用して光を通すといった方法もあります。
⑤日射熱利用暖房
冬に窓から日射熱を取り込み、その熱を蓄えて主に夜間に暖房として利用します。
日射熱を取り入れる「集熱」、逃がさないための「断熱」、蓄える「蓄熱」の3つができれば、室温の変動が小さくなり快適性が向上し、暖房費の削減にもつながります。
窓の大きさ・種類・位置、軒や庇の角度や大きさなどは「冷房期の平均日射取得率:ηAC(イータ・エーシ)値」といった数値を元に設計されます。
日射量は地域差もあり、立地条件も大きく関わるので、それらを踏まえて検討しなければいけません。
太陽は最強&無料の暖房器具
パッシブデザイン最大の恩恵は冬の暖房費削減と快適性の向上にあります。
パッシブデザイン住宅を一言で言うと「太陽と友達になる家」。
太陽の熱を窓からしっかりと取り入れることで、暖房なしでも暖かく快適に暮らすことができたり、光熱費を大幅に削減することができます。
特に冬の暖房費は家の中で使用するエネルギーの中で最も高いので、「無料」である太陽の熱をだけで快適性と省エネ性を実現できるのは大きなメリットと言えます。
「窓」の設計が快適を左右する
パッシブデザインのベースは「断熱」ですが、家の中で最も熱が出入りするのは「窓」になります。
図:夏に流入する熱の割合(左)と冬に流出する熱の割合(右)
- 夏:8月5日14時~15時(日平均外気温最大日)、東京
- 冬:2月14日5時~6時(日平均外気温最低日)、東京
※いずれもアルミ窓(複層ガラス)の場合
上記数値はYKK AP株式会社算出
図の通り、窓から出入りする熱の量は他の部位と比較しても相当な量であることがわかります。
断熱・遮熱性能の高い窓の採用は断熱性能とともに欠かすことができません。
また、日射遮蔽、通風などにおいても窓の設計が快適さを左右する肝となります。
日射シミュレーションに基づいて窓の配置や大きさ、スペックなどを選択する、風の流れを予測して窓を配置して“風の通り道”をつくる、室内の熱を排除する高い窓を設けるなど、窓が担う役割はとても大きいのです。
窓の種類や性能についての詳細は「窓の性能、種類、計画のポイントを解説!」をご覧ください。
3.パッシブデザイン住宅のメリット・デメリット
実際にパッシブデザインを取り入れた住宅にはどのようなメリットとデメリットがあるでしょうか?
以下でパッシブデザイン住宅のメリットとデメリットを解説します。
パッシブデザイン住宅のメリット
- 年中快適に過ごせる
- 光熱費を抑えることができる
- 地球環境に優しくエコな暮らしができる
年中快適に過ごせる
パッシブデザインの魅力はなんといっても、その住み心地です。
パッシブデザインのベースは高断熱・高気密。そして日射取得と遮蔽です。
冬は窓から太陽の熱をしっかりと取り入れることによって、暖房を使わなくても寒さを感じることなく過ごせます。
夏は庇の長さによって太陽光を防いだり、風通りの良い位置に窓を設置したりすることで、室温の上昇を防ぎます。
図:夏と冬の日射角度の違い
このようなパッシブ技術を施すことで、真冬や真夏でも少ない冷暖房で快適に過ごすことができます。
光熱費を抑えることができる
冷暖房をあまり稼働させなくても快適なので、省エネにつながりお財布にも優しい住宅になります。
断熱・気密性の低い住宅では、冷暖房によって暖めたり冷やしたりした空気は、外気に漏れてしまいますが、パッシブデザインの住宅ではその心配も不要。
例えば、家の中に吹き抜けなどの空気の通り道を確保することで、夏も冬もエアコン1台で快適&省エネに過ごせる家もあります。
光熱費はまだまだ高騰していく見込みなので、パッシブデザインはこれからの住まいで不可欠な設計になります。
地球環境に優しくエコな暮らしができる
消費エネルギーが少ないということは地球環境に優しいエコな住宅と言えます。
近年、国を上げて「SDGs」などを掲げていますが、パッシブデザインはまさに、このような思想と合致した設計手法です。
パッシブデザイン住宅のデメリット
- 初期費用が高くなる
- 土地によっては性能を十分に発揮できない
- 設計を依頼できる会社が限られる
パッシブデザイン住宅には多くのメリットがある一方で、デメリットもあります。
建築コストが高くなる
パッシブデザインを実現させるためには、建物を高断熱・高気密にする必要があります。
断熱性能を高めるためには、壁の中に入れる断熱材を分厚くしたり、高品質な断熱材を使用する必要があります。
その他、自然のエネルギーを最大限に活用できる設計にするため、窓や庇の構造や素材が高価になり、初期費用はローコスト住宅などと比較すると高くなってしまいます。
ただし、パッシブデザイン住宅は省エネ性も高く光熱費などのランニングコストが低いため、初期費用と光熱費のバランスを考えてパッシブデザインの採用を検討してみましょう。
土地によっては性能を十分に発揮できない
太陽の光・熱、風などの自然エネルギーを活用した設計であるが故に、建築地によっては性能を十分に発揮できない可能性もあります。
例えば、隣の建物が影響して充分な太陽光を取り入れられない場合、パッシブデザインの採用が難しくなります。
パッシブデザインを利用する場合、建築会社以外にも適切な土地を選ぶことが必要です。
パッシブデザインの設計が可能な建築会社を選び、土地もあわせて相談することがおすすめです。
設計を依頼できる会社が限られる
パッシブデザインを実現させるためには、住宅に関する豊富な知識と技術力が必要です。
そのため、すべての住宅会社で設計できるわけではありません。
例えば、パッシブデザインの一つの条件である「断熱」。夏の熱を遮断、冬暖めた空気を逃がさないためには高断熱・高気密にする必要があります。
気密性能はC値(相当隙間面積)で示されますが、目安としてC値1.0(㎠/㎡)以下にすることが求められます。
写真:気密測定の様子。C値は実測値なので、一棟ごとに計測しなければ確認できない。
実はC値を1.0以下にできる住宅会社や気密測定を実施している会社はかなり少数で、その少数の住宅会社の中から、さらにパッシブデザインが可能な会社を見分ける必要があります。
パッシブデザインを採用した注文住宅を検討している場合、建築事例がある会社なのかどうかをチェックしてみましょう。
「家づくり学校」ではパッシブデザインに代表される快適性や省エネ性を重視した住宅会社のご提案・紹介をしています。
また、パッシブデザインの効果は冬の寒い日や夏の暑い日に体感してみることではじめてわかります。
家づくり学校ではパッシブデザイン住宅の体感の機会も設けているので、ぜひお気軽にお問合せくださいませ。
4.パッシブデザインが得意なハウスメーカー・工務店11社
住宅会社の数は非常に多く、お住まいの地域の会社の中からパッシブデザインが得意な住宅会社を見極めるのは困難と言えます。
そこで、本章では「家づくり学校」の拠点があるエリアを中心に、各エリア別のおすすめハウスメーカー・工務店をご紹介します。
なお、選定した住宅会社は「家づくり学校」が住み心地や快適性などを、直接体感して確かめた厳選したハウスメーカー・工務店です。
各社の特徴をまとめていますので、ぜひ参考にしてみてください。
夢・建築工房【埼玉県】
- 住所:埼玉県東松山市西本宿1847
- 電話番号:0493-35-0010
- 営業時間:8:00~20:00(水曜日定休)
会社の特徴
「夢・建築工房」はパッシブハウスジャパン賛助会員です。
住宅の断熱性能をQ値は0.7~1.2W/㎡K、UA値は0.15~0.3W/㎡Kと計算でしっかり把握します。
最高性能の家から国の基準+αをランクに分け、ランク別の燃費性能、快適度を実際の測定値によりお伝えし、建主様の予算と希望に沿った快適な住環境になるよう打ち合わせをしてくれます。
第3者機関による気密測定も全棟実施し、C値:0.5㎠/㎡以下を約束する徹底ぶりです。
担当の岸野社長はわかりやすく丁寧に提案をしてくれる方です。
アートテラスホーム【湘南エリア】
- 住所:神奈川県横浜市金沢区富岡東4-3-51
- 電話番号:045-791-7855
- 営業時間:9:00~18:00
会社の特徴
アートテラスホームは、建築のプロが一貫して管理・施工することで品質を保証します。
自社設計士による設計で、上質な自然素材と開放的なプランでご家族に合った住まいを提供してくれます。
省エネ性や耐震性にも優れ、安心で快適な住空間を実現しています。
口コミでも「スムーズな施工」と評判です。
丸正渡邊工務所【山梨県】
- 住所:山梨県甲府市青葉町10-13
- 電話番号:055-232-3100
- 営業時間:10:00~17:00(日曜日定休)
会社の特徴
快適に健康で省エネルギーの実現のため、断熱・日射遮へい・通風などを総合的に計算したパッシブデザインの設計提案します。
全棟気密測定を実施し、高い気密性能を標準仕様にするなど徹底的にこだわりを持ちます。
熟練の技術を受け継ぐ柔軟な対応力を培った職人集団が建物と向き合い家づくりを手掛けます。
DANSK DESIGN【兵庫県:神戸市】
- 住所:兵庫県神戸市東灘区向洋町中6-9 神戸ファッションマート 8階 8E-02
- 電話番号:078-252-7717
- 営業時間:9:00~18:00
会社の特徴
C値は0.5㎠/㎡以下を基本として、Q値1.5W/㎡K以下の高い住宅性能を確保します。
内壁にはセルロースファイバーを140㎜~340㎜施工し、外側にはロックウールを採用したW断熱工法を採用、サッシは国内樹脂トリプルを上回る木製サッシを採用するなど、素材にも徹底的にこだわった家づくりを行います。
高谷工務店【兵庫県:姫路市】
- 住所:兵庫県姫路市夢前町前之庄3126-3
- 電話番号:079-336-0376
- 営業時間:9:00~17:30
会社の特徴
「高谷工務店」はパッシブハウスジャパン賛助会員です。
断熱材は吹き付け断熱を採用し、G2グレードの冬暖かく夏涼しい空間を作り出します。
C値も0.2㎠/㎡と優れた気密性を確保するだけでなく、耐震性能においても許容応力度計算における等級3を確保することや直下率の考えで、地震に強い家づくりを実現します。
マツミ住宅【岡山県】
- 住所:岡山県倉敷市神田1丁目15-6
- 電話番号:086-444-0588
- 営業時間:10:00~18:00
会社の特徴
「暮らし省エネマイスター」がつくる環境と人に優しい、パッシブデザインを追求した家づくりを手掛けます。
C値、UA値、Q値はもちろん、耐震等級やウォールスタット、パッシブデザインを取り入れた温熱計算をベースとし年間光熱費シュミレーションまで試算します。高性能住宅なので住み心地はとても快適です。
自然素材の扱いも得意な会社であり、漆喰などの左官壁や、無垢の木を使うことで、新建材には無い風合い溢れる空間をつくります。手触りがよく、手間をかけて永く使い続けられ、最終的に地球に還すことのできる自然素材を使った家づくりをご提案しています。
代表の平松さんは元大工、現場叩き上げの技術力と素材の目利きで、お客様の想いや遊び心をトコトン形にしていきます。また、とても勉強熱心な方で、先進の施工技術を常に学び取り入れ、適正コストで高い性能を発揮する住空間の創造をしてくれる頼もしい建築のプロフェッショナルです。素朴で気さくな性格でお客様との信頼関係は抜群です。
社長をはじめ、スタッフ全員が現場をよく知り尽くす、大工の集団であることも魅力です。お客様の要望に柔軟な対応で、造作家具のご提案をしてくれたり、打ち合わせスペースには大工が造作したテーブルや飾り棚などを見ることができます。
N’s/NaccaDesign(ナッカデザイン)【広島県:福山市】
- 住所:広島県福山市神辺町道上556番地5
- 電話番号:084-963-7647
- 営業時間:9:00~18:00
会社の特徴
「NaccaDesign」はパッシブハウスジャパン賛助会員です。
高気密・高断熱で省エネ性が高く、デザイン、素材にもこだわったパッシブデザインの家を手掛けます。
自社の省エネ建築診断士が建物の消費エネルギーを計算し、快適な温熱環境に必要な断熱性能を提案し、その高い住宅性能は広島県でもトップランナーの位置にあり、C値は標準で0.3㎠/㎡以下、そして0.1㎠/㎡を切ることも可能です。
ホームクリエたくみ【広島県:東広島市】
- 住所:広島県東広島市八本松東6-9
- 電話番号:082-427-0777
- 営業時間:10:00〜18:00(水曜日定休)
会社の特徴
東広島市の気候を研究し、快適に暮らすための性能の基準を設け、高性能な家を実現します。
断熱、気密、素材、窓の位置などあらゆる箇所にこだわり家づくりを行います。
シックハウス症候群、冷え性、頭痛など家の素材が身体に与える影響は大きいことを考え、ビニールクロスや合板は使用せず、自然素材を使用し、健康的で温かみのあるお家になります。
また、代表取締役の森本社長は勉強家。誠実な姿勢で一棟一棟丁寧に向き合います。
passive design house MiRaie(ミライエ)【香川県】
- 住所:香川県高松市多肥上町2394-5
- 電話番号:087-880-2655
- 営業時間:9:00~17:00
会社の特徴
その土地の立地環境を踏まえ、パッシブ設計(受動設計)に基づく家づくりを提案してくれます。
日射や風の流れといった自然の力を上手く活用し、暖と涼を効率よくとれるようにすることで、省エネ・エコな暮らし方をカタチを実現。
暮らし方に合わせ、住みやすく使いやすい住まいを、豊富な経験と斬新なアイデアで時には遊び心も織り交ぜつつ、限られた空間を最大限に活用して生み出される住空間は、長く住まうごとに愛着さと快適さを増していきます。
passive design house MiRaie(ミライエ)
えひめ住販【愛媛県】
- 住所:愛媛県松山市森松町1035-1
- 電話番号:089-997-7230
- 営業時間:9:00~18:00
会社の特徴
太陽光発電を利用した省エネで「光熱費のかからない家づくり」つまりZEH「ゼロエネルギー住宅」に特化した工務店です。
住宅のトレンドにも敏感で、各種セミナーに参加し全国を飛び回っています。
UA値(外皮平均熱貫流率)0.46W/㎡K以下/C値0.3~0.4㎠/㎡以下で行うなど、数値にも高いこだわりを持っています。
パッシブデザインの家を建てるなら「家づくり学校」へ!
本章では、全国のパッシブデザインが得意なハウスメーカー・工務店について解説しました。
ただし、今回取り上げた会社は数ある住宅会社の中の一例です。
「家づくり学校」ではパッシブデザインをはじめとする快適で省エネな家を実現できる住宅会社のご提案・紹介を行っています。
ご提案する住宅会社は、地域に根差して真面目に家づくりを手掛ける会社です。
家づくり学校のアドバイザーが自ら現場を訪問し、会社のキーマンと直接会い、建築現場や実際に手掛けた住宅を見学して施工技術を確認。その住宅から醸し出される空気感や素材感をはじめ、快適な住み心地かどうかを体感して確かめ、目利きした上でご提案させていただいております。
また、パッシブデザイン住宅を実際に「体感」する機会も設けています。
注文住宅の会社選びでお悩みなら、ぜひ家づくり学校へお越しください!
家づくり学校でできること
- 家づくりで後悔しないための基本知識のレクチャー
- ムリのない予算を一緒に考え、お金の不安を解消
- お客様一人ひとりに合った住宅会社を紹介
- パッシブデザインをはじめとする冬暖かく夏涼しい家の体感
個別相談はオンラインでも!
5.パッシブデザインの成功事例・口コミ
本章ではパッシブデザインによって建てられた家の成功事例をご紹介します。
併せて、実際に住んでみての感想や口コミも紹介させていただきます。
お施主からのリアルな声なので、ぜひこれからの家づくりにお役立てください!
光と風を味方に。パッシブな住まい
「とにかく暖かいんです」とのこと。冬でも半袖と短パン、タオルケットで寝ているとか。
日射シミュレーションにより自然光の恩恵を最大限受けられるように建物や窓を設計。冬は暖房なしの早朝でも18℃を下回らない。
- 施工エリア:岡山県倉敷市
- 施工会社名:有限会社マツミ住宅
お施主からの口コミ・感想
毎朝、リビングに朝日が差し込み、気持ちのいいスタートが切れます。真夏もエアコン1台で快適でしたし、冬は本当に暖かくて半袖で過ごすときもあるほどでした。
暖かさが家族を包むパッシブZEH
自然エネルギーとロケーションを最大限に生かしたリビング
光や風を取り込む大開口にはトリプル樹脂サッシを採用
- 施工エリア:広島県福山市
- 施工会社名:Nacca Design(ナッカデザイン)
お施主からの口コミ・感想
一言で言うと「最高」です。家中の部屋が20℃前後ですのでストレスを全く感じません。全国的な大寒波もありましたが、日中は無暖房で暖かく過ごせました。
光熱費ですが、昨今の燃料調整費の大幅な値上げを受けても、引っ越し前と変わらなかったことには驚きました。これは、太陽光発電の売電や最低容量のエアコンでも十分に快適に過ごせる住宅性能の賜物だと思っています。
光と風が幸せを運び込む高性能パッシブデザインハウス
しっかりと採光を計画したLDK。日中は明るく、自然と家族が集う空間に
上下階を緩やかにつなぐ吹き抜け
日射取得・遮蔽や通風計画を考慮して設計されたスタイリッシュなパッシブデザインハウス
- 施工エリア:香川県高松市
- 施工会社名:passive design house MiRaie(ミライエ)
お施主からの口コミ・感想
日中にエアコンをつけなくても快適な、“リビングでくつろげる家”を実現できました。コロナ禍だからこそ、余計にこの生活のよさに気付かされましたね。
パッシブデザインをうまく取り入れることで、冬暖かく夏涼しい快適な家にになるだけでなく、光熱費がかからないお財布に優しいエコな家を実現することができます。
「持続可能な家づくり」はこれからの家づくりのキーワードです。
7.パッシブデザインで建築された公共施設の事例
パッシブデザインは、住宅だけでなく公共施設の建設にも取り入れられる設計手法です。
地球に負荷をかけない建物が重要視されている現代、パッシブデザインは公共事業においても注目されています。
ここでは、パッシブデザインで建築された公共施設の例を見ていきましょう。
東部地域振興ふれあい拠点施設
埼玉県春日部市にある、環境に配慮した公共施設です。地熱・太陽光・太陽熱などあらゆる自然エネルギーを活用できる構造になっています。
「都市を新しい森にする」というコンセプトのもと設計された地域振興ふれあい拠点施設です。
鉄骨と木を組み合わせた地上6階地下1階の建物構造となっており、ハイブリット構造が取り入れられています。
長池ネイチャーセンター(現 長池公園自然館)
八王子にある長池公園自然館は、里山をテーマにデザインされており、自然や里山についての体験学習を行う施設です。
建物自体には、建物と室内環境に配慮した設計が施されています。
パッシブソーラーシステムによる換気暖房や太陽電池発電、風車を使っての雨水利用など、数多くの方法で自然エネルギーが利活用されています。
8.まとめ
本記事ではパッシブデザインの基本情報や設計手法、パッシブデザインが得意なハウスメーカー・工務店から成功事例などを解説しました。
以下、パッシブデザインのまとめになります。
- パッシブデザインとは、太陽の熱や光、風といった自然のエネルギーを最大限に活用して、快適で省エネな住まいを実現させる設計手法
- アクティブデザインという機械・設備の力で快適で省エネな住まいを実現させようとする設計手法もあるが、初期費用と修繕費に注意する必要がある
- パッシブデザインの原則は「断熱」「日射遮蔽」「通風」「昼光利用」「日射熱利用暖房」の5つの要素からなる
- 最大のメリットは快適性と省エネ性の高い家になること。一方、パッシブデザインで建築できる住宅会社が少数で見極めが必要
- パッシブデザインによって建築された建物は使用エネルギーが少なく地球環境にも優しいことから公共施設にも利用されている
先述した通り、数多くの住宅会社の中からパッシブデザイン建築が可能なハウスメーカーや工務店を見つけるのは至難の業です。
また、パッシブデザインの住み心地や快適性は、実際に建てられた家を「体感」しなければ確かめられません。
「家づくり学校」ではパッシブデザインが可能な住宅会社の情報を幅広く取り揃えており、ご予算に合わせてご提案・紹介させていただきます。そして、パッシブデザインで実際に建てられた家の体感・見学する機会も設けています。
パッシブデザインのことなら「家づくり学校」にお聞きください!