自然の力を取り入れて暮らす「パッシブデザイン」とは?
2023.09.17
2018.04.16
快適で省エネな家にするためには、高い断熱性能、省エネ性の高い設備機器の導入が必要ですが、それだけでは本当の意味での省エネ住宅は実現できません。
これらとあわせて、機械に頼らず、太陽光や風、熱といった自然エネルギーを上手に活用することで冷暖房エネルギーを削減し、室内を快適にするパッシブデザインが欠かせません。
地域の特性や立地条件をふまえて、「断熱」「日射遮蔽」「通風」「昼光利用」「日射熱利用暖房」の5つの要素をバランスよく建物に組み込む設計技術、パッシブデザインについて紹介します。
パッシブデザインの3つのメリット
そもそもパッシブデザインって、どんなメリットがあるんでしょうか。
①快適な室内
最小限の冷暖房機器で一年中快適な温度・湿度を保てるので、夏の暑さや冬の寒さなどの温度ストレスから解放され、快適に過ごせます。
②住む人の健康にも良い影響
部屋間の温度差が少ないので、体への負担が少なく、ヒートショックなどの家庭内事故を抑制できます。
③光熱費の削減でお財布にも優しい
機械に頼らなくとも、建物自体で快適を作り出せるよう設計されているので、少ないエネルギーで快適に過ごせて光熱費(ランニングコスト)が削減できます。ひいては地球温暖化の防止、CO2の削減にもつながり、地球にも優しい住まいと言えますね。
パッシブデザインに不可欠な5つの要素
①断熱
パッシブデザインのベースとなるのが高気密・高断熱。外壁、屋根(天井)、床、そして窓の断熱性能を高め、建物の保温性能を上げます。
特に冬の暖房によるエネルギー消費量は多いので、冬暖かい家にすることは省エネにつながります。
また、窓は家の中で最も熱が出入りするところ。断熱・遮熱性能の高い窓の採用は、断熱材の施工とともに、パッシブデザインに欠かせない要素です。
②日射遮蔽
「夏涼しく」を実現するためには、日射を窓から室内に入れないことが重要です。
日射熱をカットできれば、冷房に使うエネルギーを減らし、涼しく過ごすことができます。いかに日射を遮ることができるかが、夏の快適性を左右するポイントとなるわけです。
季節ごとに変化する日射角度をふまえて軒や庇の長さや角度を設計。夏は日射を遮り、冬は日射を取り入れて暖かさを確保します。日射を反射しやすい屋根・外壁材を採用するのも効果的です。
▲冬に葉を落とす落葉広葉樹を庭に植えたり、窓の外側にシェードやすだれなどの日よけを取り付ければ、風を通しながら日射を遮ることができます。
③通風
家全体に風を行き渡らせ、室内に溜まった熱を排出させるために欠かせない「通風」。
風の向きをふまえて建物内での風の動きを予測し、窓の配置を計画します。風を呼び込む袖窓や出窓を設置したり、換気により室内の熱を屋外へ排出するために高窓を設けるのも重要です。
▲吹き抜けで上下に風を通し、上部に高窓を設けることで風を立体的に通して、家の中に溜まった熱を排出します。
▲風を窓に当てて室内に取り込むウィンドキャッチャー。
④昼光利用
昼間に太陽光だけで明るい室内を実現することで、照明エネルギーを削減するのが「昼光利用」。
リビングなど昼間に長く過ごす場所には2面以上に窓を設ける、あるいは室内の奥まで明るさを取り込める吹き抜けや天窓、高窓を設けたり、建物の中心に庭をつくるなどの工夫があります。
▲リビングは吹き抜けで上から下に光を落とし、大きな窓で光をしっかり取り込みます。
▲中庭を設けて家全体を明るくします。
⑤日射熱利用暖房
冬に窓から日射熱を取り込み、その熱を蓄えて、主に夜間、暖房として利用するのが「日射熱利用暖房」。
日射熱を取り入れる「集熱」、逃がさないための「断熱」、蓄える「蓄熱」の3つが実現できれば、室温の変動が小さくなり、快適性が向上、暖房エネルギーの削減につながります。
蓄熱性の高いタイルやコンクリートなどを床材に使用することで、窓からの日射熱を蓄え、室温の下がる夜間に熱を放出させて室内を暖めます。
確実に効果を得るためには、南側の窓を大きく取るだけでなく、立地条件をふまえた日射取得のシミュレーションが不可欠です。
夏涼しく、冬暖かい理想の家を叶えよう
いかがでしたか?
太陽光や風など、自然の力を有効活用して快適をつくりだす設計手法、パッシブデザインについてご紹介しました。
パッシブデザインをしっかり取り入れることで、「夏は涼しく冬は暖かい」理想の家が叶います。
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