断熱等級5のZEH住宅なのに寒い!?後悔しないために知っておくべき対策を解説
2025.02.12

「ZEH住宅は高性能で光熱費が安くなる」と聞いて建てたのにもかかわらず、「冬になったら寒くて後悔している…」という声を耳にします。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)は、国が推奨する省エネ住宅であり、高い断熱性能やエネルギー効率を実現できることが特徴の次世代住宅ですが、必ずしもすべてのZEH住宅が快適で暖かいとは限りません。なぜ、ZEH住宅なのに寒さを感じてしまうのでしょうか?
今回は以下のポイントを中心に、ZEH住宅・これから求めるべき断熱性能について詳しく解説します。
- ZEH住宅の断熱性能の仕組みと、寒いと感じる原因
- 快適なZEH住宅に必要な要素やポイント
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1.ZEHの特徴と断熱等級5について
ここでは、ZEH住宅の定義や特徴、さらに断熱等級について詳しく解説します。
ZEH(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)とは
ZEHとは、「Net Zero Energy House(ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス)」の略称で、年間の一次エネルギー消費量の収支をゼロにすることを目指した住宅のことです。具体的には、住宅の断熱性能を高め、高効率な設備を導入することでエネルギー消費を大幅に削減し、さらに太陽光発電などの再生可能エネルギーを活用することで、年間のエネルギー収支をゼロに近づける設計となっています。
ZEHの基準は、住宅の断熱性能(外皮性能)と一次エネルギー消費量の基準によって定められており、「ZEH」「ZEH+」「Nearly ZEH」「Nearly ZEH+」「ZEH Oriented」といった種類に分類されます。
住宅の断熱性能の指標「断熱等級」とは
「断熱等級」は正式には「断熱等性能等級」といいます。住宅の断熱性能を評価する基準であり、「住宅の品質確保の促進等に関する法律(品確法)」に基づいて国土交通省が定めています。断熱等級は1から7までの7段階が設定されており、数字が大きいほど断熱性能が優れていることを示します。
断熱等級は、省エネルギー基準の改正とともに進化してきました。1980年に初めて導入されて以降、数度の改正を経て、2022年には新たに等級5、6、7が制定されました。これは「2050年カーボンニュートラル」の実現を目指した施策の一環であり、住宅の断熱性能を向上させることで二酸化炭素(CO2)の排出を削減し、脱炭素社会の実現を促進することを目的としています。
また、2025年4月には、すべての新築住宅において断熱等級4(省エネ基準)への適合が必須となります。
ZEHを取得するには断熱等級5以上が必要
ZEHの基準を満たすためには、最低でも「断熱等級5」に適合する必要があります。これは、室温が10℃を下回らない程度の断熱性能を確保した基準であり、等級4よりも室内の温度変化が抑えられるよう設計されています。
しかし、寒冷地では断熱等級5でも十分な暖かさを確保できないケースがあり、さらに高い断熱等級を求めることが推奨されています。
2.断熱等級5のZEH住宅は寒いと感じる原因
ZEH住宅は一般的に「高性能住宅」と思われがちですが、必ずしも「冬暖かく夏涼しい家」になるとは限りません。以下に、ZEH住宅が寒いと感じる主な原因を詳しく解説します。
- 「ZEH基準」は十分な性能ではない場合がある
- 気密性能が低い
- 窓の性能が低い
- 日射取得ができていない
①「ZEH基準」は十分な性能ではない
ZEH基準を満たす最低ラインの「断熱等級5」は、省エネ性能を向上させる一定の水準をクリアしていますが、世界保健機関(WHO)が推奨する「健康的な生活を維持できる最低室温18℃」を確保するには不十分なケースもあります。
政府は2030年までに省エネ基準をZEH水準に引き上げる方針を掲げていますが、現状では寒冷地などで快適に過ごすためには、より高い断熱性能である断熱等級6、7を採用することが求められています。
②気密性能が低い
ZEHの認定基準には「気密性能(C値)」の項目が含まれていません。そのため、断熱性能が高くても、家の隙間が多い場合には外気が入り込み、室内の温度が低下しやすくなります。
例えるならば、断熱性能は「暖かいセーター」、気密性能は「風を通さないウインドブレーカー」です。どれだけ厚いセーターを着ても、風を防ぐものがなければ寒さを感じるのと同じで、住宅の断熱性能を十分に発揮するには、高い気密性能も欠かせません。
③窓の性能が低い
ZEH住宅の認定基準を満たすためには、窓や扉といった開口部の断熱性能を高めることも欠かせません。開口部は、玄関の扉を開けたり窓から空気の入れ替えをしたりと、室内の温度を外に逃がしやすい場所です。室温が変化すると空調設備の稼働時間が延びるため、電気代がかかってしまいます。
ZEH住宅を実現するには、トリプルガラス・樹脂サッシといった断熱性能が高い窓を採用することが求められます。断熱性能に優れる開口部であれば、長時間室内の温度を一定に保てます。必要最小限の電力で室温を維持できることから、外の熱の影響を受けにくく、省エネ効果が期待できます。
窓の種類や性能については以下の記事で解説しています。
関連記事>>窓を変えれば冬の寒さが辛くなくなる!?窓の性能、種類、計画のポイントを解説!
④日射取得ができていない
冬場の暖房負荷を軽減するためには、太陽光を室内に取り込む「日射取得」も重要です。適切な設計がされていないと、太陽の熱を十分に活用できず、暖房に頼る割合が増えてしまいます。
適切な日射取得により、暖房器具の使用を抑えつつ、快適な室内環境を維持できます。ただし、夏場の過度な日射取得は、室温が上昇し過ぎる要因にもなるので、その適度なバランスも必要とされます。熱中症のリスクもあるため、季節や時間帯に応じて上手にコントロールすることが重要です。
以上4つの点のどこかが不足すると、ZEHを取得しても「冬は寒く夏は暑い家」になってしまいます。
3.寒くないZEH住宅を実現するために必要な要素
寒くないZEH住宅を建てるためには、単に基準を満たすだけでなく、断熱・気密・設計・設備のすべてにおいてバランスの取れた家づくりをすることが重要です。以下のポイントに注意して、快適な住まいを実現しましょう。
- 断熱等級は6以上
- 気密性能はC値1.0以下
- パッシブデザインを取り入れる
断熱等級は6以上
これからZEH住宅を建てるなら、将来を見据えて断熱等級6以上の住宅を選ぶのが望ましいです。必ずしも断熱等級が高ければよいというわけではありませんが、政府が省エネ政策を推進し、光熱費が高騰している現状を考慮すると、断熱等級6の家づくりは合理的な選択肢であると言えるでしょう。
一部の大手ハウスメーカーや工務店では、等級6を標準仕様にする動きが加速しています。例えば、セキスイハイムは2024年1月から、省エネ地域区分5~7地域で販売される全商品で等級6を標準化しています。このような流れは今後もさらに広がっていくと予想されます。
以下の記事ではこれからの住宅でスタンダードになる「断熱等級6」について詳しく解説しています。
関連記事>>断熱性能はどこまで必要?これから求められる『断熱等級6』について解説!
気密性能はC値1.0以下
ZEH住宅には断熱性能の基準が設けられていますが、気密性能の重要性も忘れてはいけません。気密性能が低いと、外気の影響を受けやすく、暖房や冷房の効率が下がってしまいます。また、気密性が高いことで計画換気が適切に機能し、結露やカビの発生を防ぐ効果もあります。
気密性能は「C値(相当隙間面積)」で表され、数値が小さいほど高気密な住宅とされます。会社によってさまざまな言い分がありますが、C値は1.0㎠/㎡以下、理想は0.5㎠/㎡以下にすると、家の隙間をしっかりと防ぐことができるので、高い断熱性能とあわせることで、快適で省エネな家になります。
気密性能は測定を実施しなければわからない
断熱性能は設計段階で計算可能ですが、気密性能は現場の施工品質に大きく左右されるため、測定しなければ正確な数値は分かりません。施工中に適切な気密処理がされているかどうかを確認する「気密測定」を行うことが重要です。
気密性能は職人の技術に依存するため、住宅会社のカタログやモデルハウスのC値をそのまま鵜呑みにするのではなく、必ず「自分の家」で気密測定を行い、数値の結果など必要に応じては追加の気密処理を実施することも大切です。
パッシブデザインを取り入れる
「パッシブデザイン」とは、太陽の熱や光、風といった自然のエネルギーを最大限に活用し、快適な住環境をつくる建築手法のことを指します。この考え方・設計をZEH住宅に取り入れることで、夏は涼しく、冬は暖かい理想的な住まいを実現できます。また、年間を通じて快適な室内環境を保ちつつ、省エネ効果を高めることができるのも特徴です。
パッシブデザインを取り入れた住宅では、エネルギー消費を抑えられるため、冷暖房などの設備機器に頼る頻度が減ります。その結果、電力消費の削減につながり、光熱費の負担を軽減することができます。さらに、ZEH住宅で必須となる創エネ設備の導入コストも抑えられるため、総合的なコストパフォーマンスの向上が期待できます。
自然エネルギーを生かす設計にすることで、住まいそのものの性能を高めながら、設備機器への依存度を減らし、より持続可能で健康的な暮らしを実現できるのがパッシブデザインの大きなメリットです。結果として、省エネでありながら快適性を犠牲にすることなく、長期的に利点の多い家づくりが可能になります。
関連記事>>パッシブデザインとは?メリット・デメリット、成功事例を紹介
4. ZEH住宅は実際に“体感”することで違いがわかる
冬暖かく夏涼しい高性能なZEH住宅を建てるうえで、各住宅会社が公表している数値上の性能を確認することはもちろん重要です。
しかし、大切なのは実際にその住まいを「体感」することです。どれだけカタログやホームページ上で高性能な断熱材や設備を採用していることをアピールしていても、実際に暮らしてみたときの快適性は数値だけでは測りきれません。だからこそ、住宅会社を選ぶ際には、その会社が実際に手掛けた家を訪れ、自分の五感で確かめることが必要不可欠です。
まずは、完成見学会やモデルハウスに足を運び、家の中に入った瞬間の空気の違いや、窓際や床の冷たさ、部屋ごとの温度差などを実際に感じてみることが、理想のZEH住宅を見極める近道となります。
住宅性能を確かめる上で欠かせない体感は、真冬(12~2月)と真夏(7~9月)に積極的に行うことをおすすめします。
真冬の住宅の体感のポイント
真冬は住宅性能の良し悪しがハッキリとわかります。
上の画像は断熱・気密性能の低い住宅をサーモグラフィで撮ったものです。床を中心に、全体的な温度が低いことがわかります。こういった性能の低い住宅では、いくら暖房を強くかけても、家の隙間から暖めた空気が外気に漏れ、冷たい空気が侵入してくるため、家が暖かくなることはありません。
こちらの図は断熱性能、気密性能ともに高い高性能住宅です。床・壁・天井など、どの部位の表面温度も均一で快適な温度帯です。
冬なら暖房をつけていない状態でも室内がどれほど暖かさを保てているのか、各所でエアコンの効き方にムラがないか、床は冷たくないかといった点をチェックするとよいでしょう。モデルハウスや完成見学会などで、靴下のまま歩くことを許可されていたら、実際に歩いてみることで肌で体感することができます。
真夏の住宅の体感のポイント
真夏も住宅の体感に適した季節です。
夏場の高性能住宅を見極めるポイントの1つ目は「エアコンの台数」です(室外機の数でも確認できます)。家一軒で1台で全部屋賄える住宅や2台(1階に1台、2階に1台)など少ないエアコンの台数で涼しくすることができるのが高性能住宅。エアコンを稼働させる力や期間が少なければ、当然、毎月の光熱費はグッと抑えることができます。
夏場の高性能住宅を見極めるポイントの2つ目は「エアコンなしでも2階が涼しいか」です。
性能が低い家は2階に上がっていくと、途中でムッと熱気を感じます。こういった家は隙間がたくさんあり、熱籠りしている場合が多いです。高気密高断熱な住宅であれば、2階は全く暑くなりません。断熱がしっかり効いて隙間がなければ熱気は上がらず、洞窟効果で2階は涼しいです。
ここまで、真冬と真夏の住宅の体感のポイントを解説しました。住宅性能値が高いことはもちろん大切ですが、それ以上に、自分や家族が快適に過ごせるかどうかを実際に確かめることが最優先です。数字だけにとらわれず、実際に体験しながら納得のいく住まいづくりを目指しましょう。
また、その家で実際に暮らしている人の生の声を聞くことができれば、住み心地や省エネ性能についてのリアルな実感を得ることもできます。
「家づくり学校」では、家づくりをする上で必須な知識の“学び”と実際の住宅の“体感”を通して、後悔のない家づくりをサポートしています。
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5.まとめ
今回の記事を通じて、冬暖かく夏涼しい快適なZEH住宅を実現するためのポイントについて理解を深めていただけたでしょうか。
- ZEHを取得するには断熱等級5以上が必要
- 実際に快適で省エネな家にするなら断熱等級6以上・気密性能はC値1.0以下は必須
- パッシブデザインを取り入れることでさらに省エネで快適な住まいに
- 各住宅会社が公表している数値上の性能を確認することは重要だが、大切なのは実際にその住まいを「体感」すること
ZEHは省エネ性能に優れた住宅ですが、断熱性能が必ずしも高いわけではありません。これから家を建てるなら、断熱等級5ではなく、より高性能な等級6・7のZEH住宅を視野に入れることをおすすめします。
断熱性能を高める工夫や最適な住まいの選び方をしっかりと検討し、一年を通して快適で健康的、そして省エネな暮らしを実現してください。
また、高断熱な家をより快適にするためには、気密性能の高さも重要です。気密性が低いと、せっかくの断熱性能が十分に発揮されず、暖房や冷房の効率が落ちてしまいます。高気密高断熱な家づくりには専門的な技術が求められ、施工の経験やノウハウが住宅会社によって大きく異なります。そのため、単に性能数値の高い住宅を選ぶだけでなく、確かな技術力を持つ住宅会社を見極めることが重要です。
とはいえ、どの住宅会社を選べばよいのか、自分に合った家づくりの進め方がわからないという方も多いでしょう。
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