無理のない住宅予算の立て方
2024.09.27
2023.07.21
ほとんどの人にとって家を建てるという経験は初めてのことではないでしょうか。
何から始めればいいの?予算はどう考えればいいの?
はっきりとしたイメージが持てないままでは不安に思われるのも当然です。
理想の家づくりをするために大切なことは、やみくもに行動するのではなく、前知識を持って始めてみることです。
なかでも、多くの方が不安に感じるのは「お金」の問題。
身の丈に合った予算はどのくらい?その予算でどんな家を建てることができるの?
この記事では「無理のない住宅予算の立て方」について解説します。
これから家づくりをお考えの方はぜひ参考にしてください。
1.住宅会社訪問前に無理のない予算を立てる
家づくりの最初の一歩は、自分たちにとって無理のない予算を把握することです。
予算は必ず、住宅会社訪問前に立てること!
それが後悔しない家づくりのための重要ポイントです。
予算立てと資金計画は違う?
住宅会社へ訪問した後、住宅会社の担当は、まず「資金計画」の準備を進めます。
この場合の「資金計画」とは、住宅会社が提案する見積金額に対して、どのようにして資金を準備していくかの計画のことです。あくまでも、この資金計画の前提となるのは、その会社の提案する見積金額です。
その金額が、私たち一人ひとりに合った適正予算と同じとは限りません。
では、自分たちの適正予算とは?
自分たちにとって無理のない適正予算を考えていきましょう。
2.適正予算のシミュレーションを行う
住宅の予算は「自己資金+援助資金+借入(住宅ローン)」の合計金額で決まります。
まずはこれらの内訳を整理するところから始めましょう。
住宅のために使える貯蓄(自己資金)はいくらあるのか?
両親や祖父母からの援助資金はあるのか?ある場合はいくらなのか?
自分たちが無理なく返済できる借入額はいくらなのか?
一つひとつ確認していきます。
そして、自分たちの建てたい家はどのぐらいの金額になるのか?
建てたい家の金額が自分たちの適正予算と合致してはじめて、安心して家づくりを進めていくことができるのです。
自己資金を決める
自己資金とは、住宅購入時における、借入(住宅ローン)以外に用意するお金のことです。諸費用や頭金の支払いのために必要となります。
まずは自分たちの貯蓄からいくら出せるのかを確認しましょう。
基本的に家づくりにかかる登記費用や手数料などの諸費用は現金で用意するのが原則です。
注文住宅の場合、諸費用は物件価格(土地+建物)の約10%といわれています。
(例:物件価格が4,000万円の場合、諸費用はおよそ400万円)
この諸費用を支払った上で、自己資金から物件価格の支払いに充てることができる金額が「頭金」となります。
頭金が多いほど借入額が少なくなるため返済は楽になりますが、預貯金を使いすぎてしまうと住宅以外の出費で困る可能性が高くなってしまいます。
自己資金は、預貯金の中から残しておく金額を考えて決めるようにしましょう。
援助資金の確認
援助資金とは、父母または祖父母などから住宅購入のために受け取る資金のことです。
住宅購入費用は高額になるため、両親や祖父母にはきちんと相談するようにしましょう。両親や祖父母などからの資金の援助があると、当然ながら、自分たちの預貯金から出す金額を少なく抑えることができます。
注意点としては、人から財産を受け取った場合、一年間に受け取った合計金額が110万円を超えると、超過分に対して贈与税が課税されてしまう点です。
知っ得ポイント
住宅を取得するための資金の贈与に関しては、贈与税が非課税となる優遇制度などがあります。
ここからは、Aさん家族を例にとって考えてみましょう。
●Aさん家族:夫婦(夫 33歳、妻 33歳)+子2人(3歳、0歳)
自己資金をいくらにするか?諸費用分として用意する金額は下記購入金額を参考にして考えることにします。
土地付注文住宅(予定建設費と土地取得費を合計した金額)の平均購入額:4,455万円
※2021年度 フラット35利用者調査
・諸費用(物件価格の10%)の目安金額は約450万円
・ご両親と相談した結果、援助資金は見込める(金額はまだ未定)
・子どもが小さいため、預貯金はできるだけ残しておきたいので頭金は入れない
・現金で支払う必要にある諸費用の一部は援助資金でカバーする
自分たちの預貯金から自己資金として用意するのは400万円になりました。
住宅ローンの借入額を決める
自己資金と援助資金がいくら用意できるのかがわかったら、借入(住宅ローン)について考えていきましょう。
借入額はできるだけ抑えて無理のない返済計画にしていくことが、住宅取得後の生活のためにはとても大切になってきます。
無理のない予算をシミュレーション
では、実際に住宅ローンの借入額をシミュレーションしてみましょう。
●Aさん家族
夫:33歳 年収400万円
妻:33際 年収250万円
Aさん家族の無理のない借入額はいくらになるでしょうか。
返済負担率と年収倍率から考える
まず初めに、金融機関からいくら借りることができるのか「借入可能額」を見ていきましょう。
一般的に金融機関は、住宅ローンの融資額を「年収※」をもとに計算します。
※「年収」とは年間に得られる総収入のことで、税金や社会保険料などが差し引かれる前の金額です
そして、借入可能額の判断基準として「返済負担率」や「年収倍率」が用いられます。
【返済負担率】
返済負担率とは、年収に占める住宅ローンの年間返済額の割合のことです。
住宅金融支援機構の【フラット35】の返済負担率は以下の基準に設定されています。
【フラット35】の返済負担率の基準
一般的には30~35%が返済負担率の目安とされていますが、年収が多い場合などは35%以上に設定している金融機関もあります。
(例)Aさん家族の場合
世帯年収は650万円(夫400万円+妻250万円)
年収650万円×返済負担率30%=年間返済額195万円
(借入条件)
返済期間:35年
返済方法:元利均等
金利:年2.0%(全期間固定金利)
上記条件で計算した場合の借入可能額は4,900万円となります。
【年収倍率】
年収倍率とは、年収に対する購入価格の比率をあらわした数字のことです。
年収650万円のAさん家族が3,900万円の物件を購入する場合の年収倍率は
「3,900万円/650万円=6倍」と、求められます。
同じ物件価格でも高収入のほうが年収倍率を低く抑えられるのが特徴です。
この年収倍率を用いて「住宅ローンは年収の何倍まで借りられるか」が借入可能額の判断基準の一つになっています。
金融機関によっては年収の8~10倍まで借りることができるといわれていますが、これはあくまでも借入できる上限金額であって、無理なく返済していける金額ではありません。
先ほど算出したAさん家族の借入可能額4,900万円は、年収倍率でいえば約7.5倍となります。
何度もいいますが、借入可能額=返済可能額ではありません!
月々の返済額から借入額を考える
借入額を決める方法として「月々の返済額」から算出する方法があります。
月々の返済額の目安としては「世帯年収の20%以内」が無理のない水準と言われています。
(例)Aさん家族の場合
世帯年収は650万円(夫400万円+妻250万円)
世帯年収の20%以内で算出した月々の返済額の目安は?
650万円×20%÷12ヶ月=約10.8万円
この月々の返済額をもとに、以下の条件で借入額をシミュレーションします。
月々の返済額:10.8万円
返済期間:35年
返済方法:元利均等
金利:年2.0%(全期間固定金利)
上記条件から算出した借入額は3,260万円
年収倍率で考えると世帯年収の約5倍になります。
Aさん家族の無理のない借入額は3,260万円となりました。
住宅の総予算を決める
住宅の総予算は「自己資金+援助資金+借入額」の合計金額です。
ここまでの段階でのAさん家族の住宅の予算は、
借入額3,260万円+自己資金400万円=合計3,660万円となりました。
次章では、この無理のない予算に基づいた住宅購入のシミュレーションを行います。
3.住宅購入のシミュレーション
前章の無理のない予算のシミュレーションでAさん家族の無理のない予算は3,660万円ということがわかりました。
では、Aさん家族は予算3,660万円で、どんな土地に、どんな家を建てることができるでしょうか?
次に住宅購入のシミュレーションを行います。
購入可能な土地と住宅の価格は?
ここでは以下の条件でシミュレーションします。
・土地価格:1,250万円(坪単価/25万円×広さ/50坪)
・建物価格:約1,760万円~約2,880万円(一人8坪を想定して4人家族で32坪×建物坪単価※詳細は下記で解説)
・諸費用:450万(注文住宅の一般的な平均相場)
図①
土地+建物+諸費用の合計で3,460万円~4,580万円の予算幅が見えてきます。
図を参考にしていただければ、土地と諸費用に関しては変動がほぼないことがわかります。
土地は希望するエリア・面積さえ決めてしまえば、基本的に相場価格は同じです。
また、住宅ローン関連の費用や仲介手数料、地盤改良費、外構費などの諸費用も平均して約450万円ほどと、あまり大きく変わることはありません。
つまり、家づくりにおいて大きく変動するのは建物の金額のみということが分かります。
なので、家づくりの違いによる金額の差の理由をしっかり押さえておくことも大切です。
図②
Aさん家族の無理のない予算は3,660万円となりました。
結果、図②からもわかるように建物価格が1,920万円以下の範囲でなら家を建てることが可能ということが見えてきました。
予算もわかり、家が建てられることも明らかになりました。このタイミングで多くの人がとる行動が、家づくりの基本的な知識もないままに、やみくもに住宅展示場などへ訪問してしまうことです。
家づくりを考え始めたばかりの人は「とりあえず住宅展示場に行ってみるか!」となりがちなのです。
しかし、訪問はしてみたものの、そこで何を見ればいいのか、何を質問したらいいのかもわからないままに、結局は疲れ果ててしまい、このまま進めていいのかさえわからなくなってしまった、という声をよく聞きます。
また、家づくりの基本知識がない状態でいろいろな家を見てしまうと、自分たちの望む理想の家のイメージだけがどんどん膨れ上がり、気づけば予算もどんどん上がっていく、そんな状況に陥ってしまいます。
そしてここまできてしまうと、なかなか妥協もできなくなります。
図③
図③で示しているように、Aさん家族が住宅会社を訪問した後に出てきた予算は、約500万円プラスの4,100万円となっていました。
このプラスとなった500万円をご両親に援助資金として支援をお願いし、承諾を得ることができれば、このまま家づくりを進めることができます。(※援助資金のお願いの仕方:やみくもにお願いするのではなく、差額資金の援助をお願いするとご理解を得やすいかもしれません。)
ですが、そこまでの金額の援助資金が望めない場合、あとは、もう自己資金を増やすか、借入額を増やすしか方法はありません。
最初は無理のない予算を立てて家づくりをスタートしたつもりでも、前知識なしに住宅会社に訪問すると夢はどんどん膨らんでいき、結局出てきた見積もりを見てびっくり。。
でも人生一度の家づくりを妥協するのも嫌だし、今更引き返せないので頑張るしかない!と進めて行く人がとても多いように思います。
そうなれば夢のマイホームでの新生活は、節約と返済に追われることになってしまいかねません。いつの間にか住宅予算が上がってしまうことはとても怖いことなのです。
住宅会社訪問前に家づくりの基本知識をつける
なぜ、無理のない予算を出したにもかかわらず、予算が上がってしまうのでしょうか?
理由としては、それぞれの住宅会社の家の予算が最終的にどのぐらいの金額になるのかがわからないまま訪問してしまっていることです。
前述したように、家づくりにおいて大きく変動するのは建物の金額のみです。
住宅会社ごとの「目安価格」を前もって知っておくことが大切です。そしてその価格の差は何からくるのか? また住宅会社ごとに建てる家の「違い」は何なのか?そして、きちんとした家を建てる住宅会社の「見極め方」も知っておく必要があります。
家づくりの基本知識が身につけば、自分たちがどんな家づくりをしたいのかが見えてきます。また、それらの知識を持って見学した方が得られるものも大きく、結果的に満足のいく家づくりに繋がります。
住宅会社訪問前に、まずは家づくりの基本知識を身につけましょう!
4.まとめ
いかがでしたか。
本記事では、無理のない住宅予算の立て方について説明しました。
●予算は必ず住宅会社訪問前に立てましょう。
●自己資金、援助資金がいくらあるのかを把握し、借入額は無理のない返済計画になるようにしましょう。
●いきなり住宅展示場に行くのはNG!まずは家づくりの基本知識をつけましょう!
家づくりの最初の一歩は自分たちにとって無理のない住宅予算を立てることです。いくら立派な家を建てても入居後の生活を楽しめないようであれば幸せな家づくりとは言えません。
家づくり学校では専門のアドバイザーがお客様に合った無理のない予算立てを行っております。これから家づくりをお考えの方、いろいろ訪問してみたけど迷ってしまったという方はぜひご活用ください。
自分たちにとっての無理のない予算は分かっても、やみくもに住宅会社を訪問してしまっては「結局、予算内に収まらない!」といったことにもなりかねません。無理のない予算を掴んだ後は、賢く進めていくために家づくりの基本知識を身につける必要があります。
家づくりの後悔とは、すべて知らずして選択してしまうことにあります。
基本知識をつけて賢く選択していきましょう。
次章、STEP2「後悔しない家づくりのポイント」でそのポイントをしっかり紐解いていきます。