住宅ローンの返済期間は35年でいいの?
2023.10.25
2022.07.05
住宅ローンの返済期間は最長35年間が一般的です。ですが、最近では返済期間を最長40年間に設定できる金融機関も増えてきました。予算を考える時に返済期間は重要な要素の一つです。そんなローンの返済期間に関して、お客様からこのような質問をよくされます。
「35年のローンって、どうなんですか?」
この質問の意図としては、
①返済期間を35年より短くした方がいいのではないか?
将来どうなるか分からない中で35年ものローンを組むなんて、、不安
定年までにはローンを終わらせたい
周りの人からも借入期間は短い方がいいと言われた
そんな思いからの質問
②住宅ローン減税を効果的に活用するためには、返済期間は35年がいい?
住宅会社の担当から、住宅ローン減税の制度を最大限活用するためには、返済期間を35年にしておく方が「お得」と言われた。それって本当なのかを確認したいという思いからの質問
人生最高額の借入となる「住宅ローン」に対する不安は誰しも持たれると思います。そもそも35年のローンなんてイメージができないですよね。実は私の娘が今年35歳。そう考えると35年間なんてあっという間だったようにも感じますが、、35年前なんて、今は当たり前になっている携帯電話なんて見たことなかったですからね?35年間という期間は、そのくらい大きな変化をもたらすことができる時間ということですね。
そこで、皆様からの質問「35年のローンって、どうなんですか?」について解説していきますね。
✅そもそも「ローン」とは?
銀行などからお金を借りて、後から少しずつ分割して支払う約束のことです。
買いたいものがあるときは、まず貯蓄などをしてお金を用意してから購入しますよね。でも、高額な買い物となると、貯蓄をするにも長い時間が必要となってきます。「お金が貯まるまでの時間が惜しい!今すぐ欲しい」という方にとって、ローンを利用することで、必要と思った時期に必要なものを手に入れることができる。これがローンの最大の利点です。
ローンの利息は「時間に対する対価」つまり、利息というお金を支払ってその時間を買っていると考えていただければいいのではないかと思います。
基本的にローンは「すぐに支払えない金額の物を購入するときに利用するもの」なので、その返済は、分割払いで数か月~数十年かけて行われます。このように「返済を分割払いできること」を「期限の利益」といいます。
例えば、35年間の返済期間で契約した住宅ローンであれば、その期間の中で少しずつ分割して支払ったのでもOKという権利のことです。
もし、この権利を失えば、、どうなるか?
残りの全額を一括で支払わなければなりません。それを「期限の利益の喪失」と言います。
例えば、、住宅ローンが期限までに返済ができず、延滞してしまったら、、
その滞納期間が6か月ほど続くと、金融機関から「期限の利益喪失の通知書」が届きます。この通知書が届くと、残りの債務全額を一括で支払うしかない!!ということになるのです?残念ながら、一度失ってしまった分割できる権利を取り戻すことはできません。
このように時間の猶予を与えられているからこそ、私たちは住宅のような高額な買い物ができるのです。
この「期限の利益」は放棄することもできます。これを「期限の利益の放棄」といいます。要は、債務者(お金を借りた人)が、期限よりも早く返済したいのであれば、繰上返済することで完済してもいいよということです。
「利息はムダ」と考えられる方も多いと思います。たしかにローンを組んで購入したものが浪費であれば「利息は単なるムダ」なのかもしれません。ですが、ローンを上手に利用することができれば、支払う利息以上のものを手に入れることもできるのです。
ローンの本質を理解して、上手に活用することで豊かな人生を手に入れていただきたいと思います。
本題に戻りますね?
①返済期間を35年より短くした方がいいのではないか?
一般的な住宅ローンの場合、返済年数は、
⭐1年以上35年以下で、1年単位で自由に設定できる
(金融機関によっては1か月単位が可能な場合もあります)
⭐完済時年齢が「満80歳」まで
例えば、返済期間が最長35年だとしても、借り入れたときの年齢が46歳であれば、80歳までに完済となると返済期間は34年間(80歳-46歳)以下となります。
✅返済期間35年のメリット
⭐月々の返済の負担が小さくなる
借入額・金利・返済方法が同じでも、返済期間によって月々の返済金額は変わります。
(例)
借入金額:4,000万円
金利 :1.2%
返済方法:元利均等払
返済期間
35年→月々の返済額:116,680円
25年→月々の返済額:154,397円
15年→月々の返済額:242,932円
このように返済期間が短くなれば1回あたりの返済額が多くなり、返済期間が長いほど1回あたりの返済額は少なくなります。
⭐借入可能額が増える
年収・金利・返済負担率が同じでも、返済期間によって借入できる限度額が変わります。
(例)
年収 :500万円
金利 :1.2%
返済負担率:30%
返済期間
35年→借入可能額:4,280万円(概算)
25年→借入可能額:3,230万円(概算)
15年→借入可能額:2,050万円(概算)
返済期間を短く設定するよりも長く設定した方が、借入可能額が増加していることがわかります。
✅返済期間35年のデメリット
⭐総返済額が増える
借入額・金利・返済方法が同じ場合、返済期間によって総返済額は変わってきます。
(例)
借入金額:4,000万円
金利 :1.2%
返済方法:元利均等払
返済期間
35年→総返済額:約4,900万円(支払利息合計:約900万円)
25年→総返済額:約4,630万円(支払利息合計:約630万円)
15年→総返済額:約4,370万円(支払利息合計:約370万円)
返済期間が長くなるほど、借入期間中に発生する利息が多くなるため総返済額が増加しています。
⭐定年退職後も住宅ローンの支払いが残る可能性がある
会社員の場合は、多くの方が60歳から65歳で定年退職を迎えられるのではないかと思います。仮に35歳の方が35年の住宅ローンを組んだ場合、完済時の年齢は70歳となります。つまり、定年退職後も数年間は住宅ローンの返済が続いていくということになるのです。
公的年金だけで必要最低限の生活費さえまかなっていけるのかどうかが不安!と思われている方にとって、定年退職後も住宅ローンの返済が続くということは、さらに大きな不安材料となります。
このような不安を解消するためには、次のような対策を取っておく必要があります。
・定年後に向けて、ゆとりをもった金額の貯蓄をしておく
・定年後も、引き続き働くことで収入を確保する
・収入減となる事を見越したゆとりのある返済計画にする
✓家計を圧迫するような借り方は避ける
生活をしていくうえで必要となる支出は、住宅ローンの返済だけではありません。食費や光熱費といった支出も同時にかかってきます。これらの支出と住宅ローンの返済を両立させていくことこそが何よりも大切です!
②住宅ローン減税を効果的に活用するためには、返済期間は35年がいい?
住宅ローン減税とは、住宅ローンを利用して住宅を取得する方の金利負担の軽減を図るための制度です。条件に応じて「所得税の還付」と「住民税の控除」を受けることができます。
⭐住宅ローン減税の控除額
①年末の住宅ローンの残高の0.7%を所得税から控除
②❶で控除しきれなかった分は、住民税からも一部控除(上限9.75万円)
③控除期間は13年間
?ここがポイント
住宅ローン減税の控除額は「その年の年末での住宅ローン残高」×0.7%となるため、年末でのローン残高が多いほうが控除される金額が多くなります。
(例)
長期優良住宅の認定を取った家を取得して2022年6月からローンの返済が始まった。
借入金額:4,000万円
金利 :1.2%(固定金利)
返済方法:元利均等払
初年度の最大控除対象額は?
返済期間
35年→約27.62万円(年末のローン残高:約3,946万円×0.7%)
25年→約27.43万円(年末のローン残高:約3,919万円×0.7%)
15年→約26.99万円(年末のローン残高:約3,857万円×0.7%)
返済期間が長いと1回あたりの返済額が少なくなるため、元金の減るペースが遅くなり、年末でのローン残高が多くなります。その結果、控除対象額が大きくなっています。
13年間の控除額は全部でいくら?
返済期間
35年→控除額合計:約305万円(13年間の利息合計:約512万円)利息の方が+207万円多い
25年→控除額合計:約277万円(13年間の利息合計:約467万円)利息の方が+190万円多い
15年→控除額合計:約210万円(13年間の利息合計:約362万円)利息の方が+152万円多い
返済期間が長い方がローン減税は効果的に活用できるかもしれません。が、返済期間が長いとその分利息の負担が大きくなります。特に固定金利のように控除率より高い金利設定となっている場合は慎重に検討していただきたいと思います。
ローン減税の控除率0.7%より低い金利の場合はどうなるでしょうか?
上記と同条件で、
金利 :0.47%(変動金利)※金利が変わらない前提で試算
返済期間
35年→控除額合計:約299万円(13年間の利息合計:約196万円)利息の方が-103万円少ない
25年→控除額合計:約271万円(13年間の利息合計:約179万円)利息の方が -92万円少ない
15年→控除額合計:約206万円(13年間の利息合計:約139万円) 利息の方が -67万円少ない
控除率0.7%より低い金利で借りた場合であれば、返済期間が長い方がローン減税は効果的に活用できそうですね。ただし、控除率より低い金利ということは「変動金利」を利用することになります。目先のお得感だけに惑わされないで、変動金利のメリット・デメリットを知ったうえで金利の変動リスクをどこまで許容できるか?そのリスクに対してどれだけ対応できるか?を考えながら検討していただきたいと思います。
返済期間を短くする際の注意点
✅返済期間を後から長くすることはできない
初めに設定した返済期間を後から長くすることは、よほどのことがない限りできません。再審査が必要になってきますし、金融機関に相談しても必ず応じてくれるという保証はありません。
例えば、病気やケガ、会社の業績の悪化などで収入が一時的に減ってしまった、教育費の増加などで支出が増えてしまった、そんな状況の中でも住宅ローンの毎月の返済は続くのです。
住宅ローンは、
短く借りると後から長くはできません!
ですが
長く借りておけば後から短くすることはできます!
つまり、長く借りておいても繰り上げ返済をすることで返済期間を短くすることはできるのです。そうすることで短期間返済のメリットも生きてきます。
まとめ
⭐大切なのは「無理のない返済計画」
返済期間を目先のお得感だけで考えるのはやめましょう!
ローンの利息を長い時間の猶予に対する対価と考えれば、利息を単なるムダな出費にするかどうかは自分次第!現在も、未来も、自分や家族が幸せに暮らしていくための「無理のない返済計画」をしっかりと立てましょう!
⭐将来の収入・支出の変動を考慮する
返済期間はライフプランと一緒に考えましょう!
✓教育費用が何年後にどれくらい必要か?
✓定年後の老後の生活費のための資金はどれくらい必要か?
✓住宅ローン返済が始まっても、計画的に貯蓄することができるか?
ライフイベントを確認し、将来の収入や支出の増減が予測できているのであれば、その時期に向けての対策を立てることがなによりも大切です!
将来のキャッシュフローの変化を視野に入れたライフシミュレーションを作成して、自分たちに合った住宅ローンの借り方・返し方を見つけていきましょう!
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