耐震・制震・免震の違いとは?メリット・デメリットをまとめてご紹介!
2023.09.19
2022.12.15
以前のコラムで「耐震」「制震」「免震」の特徴についてお話しましたが、それぞれのメリット・デメリットはどのようなものが挙げられるのでしょうか?今回は、それぞれの揺れ方の特徴やメリット・デメリットについてお話します。
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「耐震・制震・免震」それぞれの揺れ方の特徴とは?
まず、「耐震・制震・免震」で比較した際、それぞれ揺れ方にどのような差が生まれるのか?という点です。
①耐震構造の揺れ
「耐震」は、建物を丈夫にし、強度を高めて揺れに耐えるようにする考え方です。建物が丈夫でも、地震のエネルギーは建物内部に伝わるため、2階、3階……と階が上がるほど揺れの幅は大きくなります。
②制震構造の揺れ
制震構造は、耐震構造の揺れに対して、上の階に行くほど揺れが抑えられます。高層ビルやタワーマンションなどの高い建物には非常に有効だと言われています。
③免震構造の揺れ
地面の揺れが直接伝わらないため、建物の揺れは地面の揺れよりも小さくなります。内部の揺れも軽減されて、体感としては実際の1/3~1/5程に感じられることもあるようです。
「耐震・制震・免震」のメリットとデメリット
それでは、ここからは「耐震」「制震」「免震」それぞれのメリットとデメリットを見ていきましょう!
1.「耐震」のメリットとデメリット
建築基準法などの法令にも定められており、現在日本で最もポピュラーとも言える耐震工法です。
耐震のメリット
①コストが安い
「制震」や「免震」に比べ、コストが安いのが耐震のメリットの一つです。予算に応じて耐震箇所を設定することができます。そもそも、家づくりにおいては建築基準法による耐震基準が定められているため、追加費用などを払うことなく、最低限の耐震性は確保されています。(とは言っても、法律で定められているのは最低限のレベルですので、しっかり補強を考えることも大切です。)
建物自体が丈夫になるので、激しい地震でも建物を倒壊から守ることができますね。
②工期が短め
耐震は、最も多く採用されている工法なので、制震や免震と比べて特殊な工事が必要ありません。
③設計の自由度が高い
耐震は、自由に設計しやすいというメリットもあります。ダンパーや特殊な装置を設置しなければならない「制震」「免震」に比べ、大きな制約は特にありません。地下室もつくることができます。
※ただし、耐力壁や必要な柱などによって大きな開口を設けられない場合などもあるので、設計担当者とよく相談するようにしてください。
耐震のデメリット
①地震の揺れがダイレクトに伝わる
地震が来た際、地盤の揺れが直接的に建物に伝わってしまうため、大きく激しい揺れを感じてしまう場合があります。特に高い建物の場合、上の階ほど激しく揺れます。
②二次被害のリスクがある
家具の転倒や物の落下など、二次被害が起こりやすいというデメリットもあります。家具が倒れてきて怪我をする恐れもあるので、倒れてこないように壁に固定しておくなどの対策を取ることが大切です。
③繰り返しの揺れには弱い
建物自体は頑丈ですが、何度も地震が起きてしまうと損傷は大きくなり、倒壊の可能性も増してしまいます。地震が重なった際や、大きな地震が起きてしまった際は、点検とメンテナンスを行うようにしてください。
―― 耐震等級とは?
現在、家を建てる場合は、法律によりすべての住宅が耐震住宅ということになります。しかし、建築基準法で定められている基準は「耐震等級1」というレベル。等級1~3までの中で最低限のレベルです。
地震への対策をしっかりしておきたい、という方は、耐震等級1の1.25倍強い耐震等級2、もしくは最高等級である、耐震等級1の1.5倍強いと耐震等級3を目指してください。(さらに詳しい話を聞きたい方は、家づくり学校の新築セミナーでお伝えいたします。)
2.「制震」のメリットとデメリット
ダンパーなどの制振装置を設置し、揺れを吸収しながら揺れ幅を小さくする方法です。
制震のメリット
①繰り返しの揺れに強い
耐震構造に比べて地震発生時の揺れを抑えられ、建物内部の損傷を小さくすることができる制震。繰り返しの揺れにも強く、余震による被害も受けにくくなると言われています。
②台風などの揺れにも強い
制震は、台風や強風による揺れにも効果を発揮しやすいです。大きな地震だけでなく、さまざまな揺れに備えたいという場合は、制震のアプローチが効果的かもしれません。
③メンテナンスが比較的簡単
制震は、メンテナンスが比較的簡単です。地震が起きたあとも、メンテナンスは基本的に不要と言われています。ただ、使用する装置の種類によっては定期的な点検が必要な場合もあります。(ゴムダンパーの場合は気温による劣化のメンテナンス、油圧式ダンパーの場合はオイルが漏れていないか、など。)メンテナンスによるお金の負担が軽減できるため嬉しいですね。
制震のデメリット
①地盤の影響を受けやすい
建物自体は地面と接しているため、地盤が弱いと十分な効果が得られない可能性もあります。
②地震の揺れがダイレクトに伝わる
耐震と同様、地震の揺れは直接的に感じてしまいます。
③装置の設置場所や数が重要
制震ダンパー(制振ダンパー)などの装置を設置する際、適切な位置へ適切な数の設置が必須になります。扱いになれている会社なら問題ないかと思いますが、適切な位置への設置ができていない場合は効果が出にくくなってしまいます。また、装置分のコストがかかるので、耐震住宅よりもコストアップすることが考えられます。
3.「免震」のメリットとデメリット
基礎と建物を切り離して、建物へ揺れ自体を伝えないようにする免震。衝撃を建物に伝えない工法です。
免震のメリット
①揺れを最も抑えられる
耐震や制震と比べて、建物の揺れを最も抑えられると言われているのが免震です。特に高い建物(ビルやマンション)で採用されています。
②二次被害が起こりにくい
家の中の揺れが少ないので、落下物などによる二次災害が起こりにくいです。地震が発生したとき、家具の転倒などによる怪我を危惧する方も多いのではないでしょうか?家具の転倒や食器の割れを比較的防ぐことができるのは助かりますよね。
③建物内部の損傷の防止
建物の内部の損傷を防ぐことができるのもメリットの一つ。地震発生時には、内壁や部材の接合部が損傷してしまうこともよくありますが、免震は目に見えない部分も損傷しにくくなります。
免震工法のデメリット
①コストが高い
免震は、耐震や制震に比べ、コストが高いです。また、定期的なメンテナンスも必要となりますが、免震装置交換の際もかなりコストがかかってきてしまいます。
②歴史が浅い
耐震や制震に比べ、免震の歴史はまだ浅いです。免震装置の耐用年数も一応示されていますが、完全に実証されているわけではないのが現実です。技術面や耐用年数については疑問視の声もあり、施工会社も限られているため、免震を求める方は、住宅会社選びのひとつの基準になってきます。
また、横揺れの地震には大きな効果がありますが、縦揺れの地震には効果を発揮しにくいというデメリットもあります。強風などの自然災害にも弱いと言われています。
③家づくりに制限が出てくる
地面と建物の間に免震装置を設けるので、地下室を作ることはできません。また、敷地の周辺にも多少のスペースが必要です(住宅の場合は50cmの空きスペースが必要)。狭小住宅や、隣家との位置関係によっては導入できない場合もあります。
結局どれが一番いいの?一番大切な見極めポイント
今回は、「耐震」「免震」「制震」の揺れ方と、それぞれのメリット・デメリットについてお話しました。
地震への対策は、「これをやっておけば間違いない!」という明確な基準は残念ながらありません。それぞれメリットもあればデメリットも存在します。
迷ってしまう方も多いかもしれませんが、予算や価値観、間取りの要望などによって選択肢を絞っていくと、自分たちに合った理想的な家づくりにたどり着けるのではないでしょうか?
また、耐震+制震、耐震+免震などそれぞれの良さを組み合わせることも可能です。コストアップにはなるかもしれませんが、より地震に強く、安心できる家になります。
ただ、最も大切なことは、どの工法にするかではなく、不備なく正しく丁寧に施工してくれる業者を探すことだと思います。家はこの先何十年も住み続ける場所ですから、信頼できる業者に出会うことが大切ですね。
重ね重ねになりますが、どれを取っても「この構造なら絶対に安全!」という確証はありません。いつ、どこで、どんな規模の地震が起こるかは誰にも予想できませんし、揺れ方や被害も想定はできません。
地震に強い工法を選ぶことは非常に大切ですが、日々の暮らしの中での備えもしっかりしておくようにしましょう!
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