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注文住宅の予算と費用

「固定金利」と「変動金利」金利の違いでどのくらい変わる?

2023.10.25

今井 園美

今井 園美

「固定金利」と「変動金利」金利の違いでどのくらい変わる?

2023年10月【フラット35】の新機構団信付(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下)の最頻金利が1.88%と9月の同条件最頻金利1.80%から0.08%上昇しました。

2020年で一番高かったのが9月の1.32%
2021年で一番高かったのは4月の1.37%
2022年で一番高かったのは12月の1.65%
2022年で一番低かったのが1月の1.30%

2022年は一年間で最大0.35%上昇したことになります。

固定金利は、国債市場で取引される長期金利の代表的な指標となっている10年国債の利回りを基準として金利が決定されます。

2022年12月に日銀は10年国債金利の上限を0.25%から0.5%に引き上げました。
これが引き金となり住宅ローンの固定金利が上昇していきました。

そして日銀は、2023年7月に長期金利の上限を1%までは容認するという柔軟な運用に見直すことを発表しました。それを受けて債券市場では10年物の国債の利回りが上昇し、落ち着きかけていた住宅ローンの固定金利は再び上昇傾向にあります。

一方で、短期金利の目標である政策金利は▲0.1%が継続しています。

メガバンクの住宅ローン変動金利型の基準金利(店頭金利)は、この政策金利に連動する短期プライムレートに1%上乗せした値に設定されています。その短期プライムレートの最頻値は2009年から1.475%とずっと変わっていません。それにより変動金利は低金利傾向がずっと継続している状況です。

その状況に加えて、金融機関同士の金利競争により住宅ローンの変動金利は下がり続けてきました。

ただ、気になる点もあります。
今年5月にみずほ銀行は住宅ローン事業部を縮小する方針を明らかにしました。つまり住宅ローン金利の引き下げ競争から距離を置く姿勢を示したのです。また、地方銀行の中には変動金利を上げる動きも出てきています。

今後の変動金利の動向が気になりますね。

 

2023年10月の全期間固定金利(35年固定)

フラット35   1.880%~
みずほ銀行   1.760%~
三菱UFJ銀行 1.700%~
三井住友銀行  1.990%~

⭐固定金利の上昇傾向は続いています。

 

2023年10月の変動金利 

みずほ銀行    0.375%~
三菱UFJ銀行    0.345%~
三井住友銀行 0.475%~
SBI新生銀行 0.290%~

⭐変動金利はほぼ横ばい状態です。

 

2023年10月「固定金利」と「変動金利」の金利差は拡大している⁉

この金利差が、返済額にどれくらいの影響を及ぼすのか?

ざっくり試算してみます。

(例)
借入額:4,000万円
借入期間:35年間
返済方法:元利均等

◆全期間固定金利

★三菱UFJ銀行
金利:1.70% →毎月返済額:126,430円

35年間の総支払利息は
約1,310万円

◆変動金利

今後の金利の変化は誰にも予測はできませんが、、

★三菱UFJ銀行
当初の金利:0.345%

① 5年毎に0.25%ずつ金利が上昇したと仮定した場合

1~   5年:0.345%  →毎月返済額:101,117円
6~ 10年:0.595%  →毎月返済額:104,898円
11~15年:0.845% →毎月返済額:108,136円
16~20年:1.095% →毎月返済額:110,793円
21~25年:1.345% →毎月返済額:112,835円
26~30年:1.595% →毎月返済額:114,229円
31~35年:1.845% →毎月返済額:114,948円

35年間の総支払利息は
約602万円

② 1年毎に0.12%ずつ上昇したと仮定した場合
→35年後の金利は4.425%

35年間の総支払利息は
約1,338万円

こうしてみると「変動金利」の低金利は魅力的です。と同時に「金利上昇」のリスクが気になります。

現在、住宅金融支援機構の調査結果によると72.3%の方が「変動金利型」を選んでいます。

 

変動金利を選びたい!金利上昇リスク対策は?

変動金利とは?

変動金利のメリットは、他の金利タイプより金利水準が低いことです。同じ借入額・同じ返済期間であれば、金利は低いほど毎月の返済額を抑えることができます。

変動金利のデメリットは、金利が上昇すると毎月の返済額が増えて家計を圧迫しかねない点です。

「変動金利型」の特徴

●金利は、半年に一回(4月と10月)見直しが行われる
●毎月の返済額は、5年に1回見直しが行われる(=5年間変わらない)
●返済額の変動幅は従前の返済額の1.25倍まで

「変動金利型」のリスク

元利均等返済では、毎月の返済額の内訳は「元金の返済に充てられる部分」と「利息の支払いに充てられる部分」に分けられ、半年ごとの金利の見直しによってその割合は変わります。
金利が上昇すると利息の割合が増え、元金がなかなか減らない状況に陥るということです。


 さらに金利の急上昇により利息分の割合が増加して、計算上の毎月利息額が毎月返済額を超えてしまった場合には「未払利息」が発生します。

未払利息は、発生時に引き落しが行われなかったからといって支払いが免除されるものではありません。後日、何らかの方法で精算(支払い)する必要があります。未払利息の発生は、返済計画に大きな支障を及ぼしかねない変動金利型のリスクといえます。

これらは「金利の上昇」によって起るリスクです。
ですが、今後、金利が上がるか上がらないかということに明確な答えを出すことができる人はいません。

 

金利上昇に備えるには?

金利が上がった場合を想定して計画を立てること!
金利が変動した時に自分たちに何ができるのか?その対策を考えておくことが重要になってきます。

借入額は「固定金利」で試算して決める

例えば、毎月の返済額を12万円で設定した場合、
金利の差で借入額はどのくらい変わるのでしょうか?

返済期間:35年
返済方法:元利均等

固定金利型の【フラット35】金利 1.88%で試算すると

借入額は約3,700万円

変動金利型の金利0.345%で試算すると

借入額は約4,700万円

毎月返済額は同じでも、金利が違うだけで借入額には約1,000万円の差が出ることがわかります。
つまり変動金利にするだけで、かんたんに住宅予算を約1,000万円アップすることができるのです!?

ですが、これは絶対NGの行為です。

なぜなら、金利が変わらないことを前提とした住宅計画になっているからです。

ギリギリ返済できていた家計が金利上昇で増えた返済額に圧迫されて、一挙に返済不能に陥ってしまい家計破綻を起こしかねません!!

金利の低い変動金利型での返済を検討している場合でも、借入額は、高めの金利設定がされている固定金利を基に試算して決めておけば、極端な金利上昇でなければ余裕をもって対応していくことができます。

固定金利との毎月の返済差額分を貯蓄する

固定金利を元に借入額を決め、実際は変動金利を利用して返済していく場合、金利差があるため毎月の返済額に差が出てきます。

そうして出た毎月の返済額の差額分は浪費するのではなく、しっかりと貯蓄&資産運用しましょう!

(例)
借入額を「固定金利」で試算した3,700万円で考えてみます。

◆固定金利
【フラット35】S(ZEH)+長期優良住宅
当初10年間:1.38% →毎月返済額:111,125円
11年目以降:1.88% →毎月返済額:117,809円

◆変動金利(5年毎に0.25%ずつ金利が上昇と仮定)
1~5年:0.345% →毎月返済額:93,533円
6~10年:0.595% →毎月返済額:97,031円
11~13年:0.845% →毎月返済額:100,025円

◆返済額の差
1~5年目→月の差額約17,500円を貯蓄
➤年間210,000円×5年間=105万円の貯蓄が可能
6~10年目→月の差額約14,000円を貯蓄
➤年間168,000円×5年間=  84万円の貯蓄が可能
11~13年目→月の差額約17,700円を貯蓄
➤年間212,400円×3年間=  63万円の貯蓄が可能

13年間で合計252万円の貯蓄ができることになります。

この貯蓄を住宅ローン控除が終了した14年後、繰上返済(期間短縮型)に充てる

利息は約44万円軽減され、返済期間も2年5ヶ月短縮されます。

仮にこの金額を利回り年3.0%で運用できれば、
252万円→13年間で約310万円に!
繰上返済すると、利息軽減効果は約54万円、返済期間は3年短縮できます。

こうした対策をすることで、いざ変動金利が上昇した場合にでも慌てることなくリスク回避することができます。

金利上昇を想定したライフシミュレーション表を作成する

今後、金利が上昇した場合の家計がどうなるのか?
それを予測するためにはライフシミュレーション表を作成し、今後の家計を見える化してみましょう!

今後、10年、20年後にはどのようなライフイベントがあるのか?
※ライフイベントとは、結婚や住宅購入、子どもの進学や結婚、車の購入や旅行など生涯の中で起こる大きな出来事を指します。
そのライフイベントには、どれくらいのお金が必要なのか?

ライフシミュレーション表に家族構成や収入状況・将来の計画などを入力し、シミュレーションすることで、将来の家計の収支や貯蓄の状況を確認することができます。

住宅ローンを変動金利型で借りて金利が上昇した場合、収支がどのように変化するのか?リスクがどこまで及ぶのか?確認したうえで住宅ローンを検討していただきたいと思います。

正直、金利がどれだけ上昇しても、それ以上に収入が上がっていれば何の問題もないんですけどね・・

 

安心返済のためには・・

何度も言いましたが、返済が長期にわたる住宅ローンの金利を予測することは誰にもできません。

金利の上昇をカバーできるリスク対策は、

借入額を適正な額としておくこと

それは「固定金利か?」「変動金利か?」どの金利タイプを選ぶか?よりも重要なのです

無理のない借入額にすること=余裕のある資金計画の第一歩!

住宅ローンは、ライフシミュレーション表を作成して今後の収支の変化を確認して検討しましょう!

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2010年に2級FP技能士、2013年に住宅ローンアドバイザーの資格を取得。得意分野は「住宅ローン」と「家計の見直し」です。2017年から家づくり学校にて、FP資格を生かした家づくりアドバイザーとしてお客様の家づくりをサポートしています。

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