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注文住宅の基本知識

【お客様からの質問】耐震等級2や耐震等級3の「相当」って、何?

2023.12.21

【お客様からの質問】耐震等級2や耐震等級3の「相当」って、何?

家づくり学校に来場されるお客様は、総じて勉強熱心な方が多いです。我々アドバイザーが思わず唸らされることを聞かれることもしばしば。今回はそういった中でいただいた質問の一つをご紹介していきたいと思います。

お客様の質問:「耐震等級でも『耐震等級2相当』とか『相当』が付く場合と付かない場合がありますが・・・その違いって、何なのでしょうか?」

※初出:2019年4月21日⇒改稿:2022年9月2日⇒改稿:2023年2月8日

その物事とほぼ等しいこと⇒『相当』。


「相当」は「その物事とほぼ等しいこと」を意味します。つまり「耐震等級2相当」であれば、「耐震等級2と大体同じくらいですよ~」ということになります。

なので誤解を恐れずに言うと「耐震等級2相当=耐震等級2では無い」ということなんですね。厳密に申し上げますと「耐震等級2」を取るためには、第三者機関による審査と認定を取らなければなりません。

要するに「耐震等級2相当」というのは『設計上は耐震等級2と同じということを自称している状態』であり、法律上(建築基準法)ではあくまで「耐震等級1と同じ扱い」になるのです。

そもそも「耐震等級」とは?調べ方や確認の仕方は?


「耐震等級」とは「建物が地震に対してどれくらいの強度を持つのか?」という指標であり、その根底には「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」があります。

さらに「耐震等級」は3段階のランクが存在します。最低が「耐震等級1」でその次が「耐震等級2」、最高ランクが「耐震等級3」。末尾の数字が大きいほど耐震性能が高いということを表しています。

以下、それぞれ「耐震等級」ごとの耐震性能の目安について列記していきます。

※参考:国土交通省webサイト「新築住宅の性能表示制度ガイド(令和4年10月1日改訂版)」

「耐震等級1」について

1.地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ
⇒「極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力に対して倒壊、崩壊等しない程度」

2.地震に対する構造躯体の損傷(大規模な修復工事を要する程度の著しい損傷)の生じにくさ
⇒「稀に(数十年に一度程度)発生する地震による力に対して損傷を生じない程度」


※イメージ

後述もしますが「耐震等級1」=「建築基準法が定める最低限の耐震基準」となっています。よって「建築基準法に則って建てられた建物」=「耐震等級1」ということにもなります。

「耐震等級2」について

1.地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ
⇒「極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.25倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度」

2.地震に対する構造躯体の損傷(大規模な修復工事を要する程度の著しい損傷)の生じにくさ
⇒「稀に(数十年に一度程度)発生する地震による力の1.25倍の力に対して損傷を生じない程度」


※イメージ

文言が「耐震等級1」とそこまで違いが無いため分かりにくいですが…要するに「耐震等級1」の1.25倍の強度があるのが「耐震等級2」の建物となります。災害時の避難場所に認定される「学校」や「病院」などの公共施設と同じくらいの耐震性能があるということですね。

「耐震等級3」について

1.地震に対する構造躯体の倒壊、崩壊等のしにくさ
⇒「極めて稀に(数百年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍の力に対して倒壊、崩壊等しない程度」

2.地震に対する構造躯体の損傷(大規模な修復工事を要する程度の著しい損傷)の生じにくさ
⇒「稀に(数十年に一度程度)発生する地震による力の1.5倍の力に対して損傷を生じない程度」


※イメージ

端的に言うと「耐震等級1」の1.5倍の強度が「耐震等級3」の建物にはあるということになります。木造住宅であれど「耐震等級3」であれば災害時には防災拠点となる「消防署」や「警察署」などと同レベルの耐震性能があるということになります。

ならば『耐震等級2相当』は・・・“ニセモノ”!?


とはいえ“ニセモノ”と言い切ってしまうのは、少々乱暴だとは思います。設計段階で建築士さんが「耐震等級2と同じ強度」を算出している訳ですから。お家自体はまごうことなき「耐震等級2」となります。

なので結論としては「耐震等級2」でも「耐震等級2相当」でも、地震に対する強さは同じであると言えます。ただ、そうすると次に浮かぶのが「第三者機関による審査と認定を取る意味があるのか?」という疑問ですよね。


※審査と認定をしてもらう意味は・・・果たしてあるのか?

地震保険料の割引を考えるのなら、取る意味アリ!!


こちらも答えとしては「地震保険で割引を受けたい場合などには意味がありますよ!」ということになります。

というのも、国が払い手となっている地震保険には「保険料が耐震等級2だと30%、耐震等級3だと50%ほど安くなる」という優遇があります

当然、保険料の割引を取得する場合には「耐震等級2相当」では駄目で、第三者機関による審査でもって「耐震等級2」と認定される必要があります。

なので、例えば「保険料の割引額(30%の割引額)」が「耐震等級1→2へのグレードアップ料金&第三者機関による認定取得料金」を上回っているのであれば、「認定を取る意味も大きくなってくる」ということが考えられると思います。

耐震等級の認定取得費用はどれくらい掛かるのか?


そこで気になってくるのが「耐震等級」の認定を取得するための費用です。ただ、一概に「認定取得」といっても「『性能評価書』による認定なのか?」「『長期優良住宅認定通知書』による認定なのか?」或いは「『フラット35Sの適合証明書』による認定なのか?」など様々な取得方法があり、掛かる費用はそれぞれで異なってくるようです。

①「性能評価書」で認定を取る場合

「住宅性能表示制度」に基づく申請を第三者機関を通して行い、それによって耐震等級の認定を取得する方法です。費用の目安としては10~20万円位が相場といわれています。

第三者機関の評価員が性能をチェックし、尚且つ「住まいの性能が同一基準で評価された等級や数値で表示される」ことにもなります。また本制度を利用した新築住宅において所定の要件を満たすものは、「住宅金融支援機構提携フラット35に係る手続きの簡素化」といったメリットを享受することができます。

②「長期優良住宅認定通知書」で認定を取る場合

いわゆる「長期優良住宅」の申請でもって耐震等級の認定を取得する方法です。住宅会社にもよりますが最近は①「性能評価書」の申請を第三者機関に依頼⇒そのまま②「長期優良住宅」の認定も取得申請…という流れで進めるところも多いようです。

費用の目安としては40万円位。「性能評価書」を取るよりもコストは上がりますが「税制・金利面での優遇措置」(例:新築時の固定資産税の軽減期間が3年→5年に延長など)があったりと、掛けた費用に勝るとも劣らないメリットが享受できる場合もあります。

③「フラット35Sの適合証明書」で認定を取る

「住宅金融支援機構」が提供する住宅ローン「フラット35S」において、「適合証明書」の申請でもって耐震等級の認定を取得する方法です。費用としては10万円位が相場といわれており、既出の申請方法の中ではコストは低めです。

「適合証明書」で耐震等級の認定を得ることで「フラット35S」に設定されている「金利優遇措置」を受けることもできます。ただ「長期優良住宅」の認定を取得した時に比べると「税制・金利面での優遇措置」には、そこまでインパクトが無いようにも見受けられます。

番外編:「耐震基準」と「耐震等級」の違い


「耐震基準」とは「建築基準法(&建築基準法施行令)」によって定められている「耐震性能の基準」であり、建築確認申請を踏まえて建築の許可をするための要件として国が定めているものです。

一方で「耐震等級」とは「品確法(住宅の品質確保の促進等に関する法律)」に沿って制定された「地震に対する建物の強度を示す指標」を表します。

現在の住宅建築では「耐震基準(建築基準法)」を満たすことがマストであり、それをクリアすれば「耐震等級(品確法)」においても「耐震等級1」の認定を得ることができます。

ただ、「耐震等級1」は3段階ある等級で最も低いレベルのものでありますし、「震度6強(阪神淡路大震災レベル)の地震が来た場合も倒壊・崩壊をせず、居住者が他所に避難することで命を守ることが出来る」ものの、「地震によって大規模な損傷が発生(=大掛かりな修復が必要)」だったりして、「地震後に改めて住むことが難しい」ケースも散見されたりしています。

よって「地震に対する備え」という意味では、「耐震等級」において「1よりも2、できれば3を取得する」という考えが望ましいと考えられるでしょう。

番外編:「耐震等級」の上げ方について


「耐震等級」を高めるためには、住宅設計の段階で幾つか抑えておくべきポイントがあります。本コラムではなるべく専門的な話は避けて、ザックリ説明させて頂きます。

①躯体構造(建物)を軽くする

「建物の重さ」自体をなるべく軽くする…ということです。要は建物が重ければ重いほど、軽い場合に比べて地震の際の「揺れ幅」が大きくなります。「揺れ幅」が大きくなればなるほど、建物が受けるダメージが大きくなる…そんなイメージですね。

※「木造住宅」ならば重量がある「鉄骨造」や「コンクリート造」と比べても軽いこともあり、耐震に有利だというのはそういうことでもあります。

②「壁面(耐力壁)」をなるべく多くする

「壁面(耐力壁)」が増えれば増えるほど、建物が丈夫になる…というのが、住宅建築における一般的な考え方です。「壁」が地震や風など「横から受ける力」に抵抗し、建物の倒壊を防ぎます。

しかしながら「壁面(耐力壁)」が多いほど耐震性は高まるとはいうものの、むやみやたらに設置するのではなく、バランスを考えて置くことも大切だったりします。
例)「建物の四隅を支えるように配置する」、「なるべく1Fと2Fを通貫して壁面を設置する」など。

※「壁」でガチガチに固めるだけではなく、建物の配置バランス(専門用語で「重心」と「剛心」といった言葉もあります)を考えることも重要なのです。

③「床の剛性」を上げる

「壁面(耐力壁)」だけでなく「床の剛性(丈夫さ)」も大事です。壁と床は繋がっているため地震の時に「壁」が持ったとしても、「床」が崩れてしまうと地震によるダメージは免れません。もっと言うと「床」が丈夫である(=剛性がある)ほど、「壁面(耐力壁)」が受けた揺れをそちらに流せるため、地震による損害を抑えることもできます。

「耐震等級が2もしくは3」の場合だと「床の剛性(水平構面)」を計算する項目が等級申請の基準にあるので、より安全性を求める事が出来るとも言えるでしょう。

長くなってしまいましたが、ご質問をいただきましたお客様、如何だったでしょうか?お家づくりにおいて耐震等級2や3での第三者機関による認定をお考えの方も、以上で挙げたことをご参考頂ければと思います。

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