断熱リフォームのメリットは冬暖かく夏涼しいだけじゃない!メリット&ポイントを解説
2025.03.05
2025.03.03

2025年4月に新築住宅に省エネ基準が義務化されるなど、日本における住宅の省エネ化は2050年カーボンニュートラルを実現するうえで欠かせません。新築住宅だけでなく、既存住宅においても、断熱性能を高めて省エネな家にリフォーム、リノベーションすることが求められており、国は2025年度もさまざまな補助制度で省エネ化を後押ししています。
とはいえ、断熱リフォーム・リノベーションは構造体を触る工事で大きな費用がかかるため、設備交換や間取りリフォームなどに比べるとハードルが高く、二の足を踏んでいる、という方も多いと思います。しかし、断熱性能を高めることで冬は暖かく夏は涼しく過ごせるようになるだけでなく、暖房・冷房にかかる光熱費がぐっと抑えられるという経済的メリットも大きく、温度差のない室内で過ごすことで、健康で長生きできるという体へのメリット、結果、医療費を抑えられるという経済的なメリットもあるのです。今の家の住み心地に不満がある、冬は結露や底冷えが耐え難い、年々値上がりする電気代に頭が痛い…という方、「断熱リフォーム」を考えてみてはいかがでしょうか?
この記事では、断熱リフォームのメリットを徹底紹介。後悔しないためのポイントを分かりやすく解説します。
この記事でわかること
- 断熱性能が低い家に住むデメリット
- 断熱リフォーム 4つのポイント
- 最も手軽な窓リフォームについて
本記事は、累計28,000組以上の家づくりをサポートさせていただいた「家づくり学校」が執筆しています。
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日本の既存住宅の多くは断熱性能が低い「寒くて暑い家」
いくら冷暖房しても夏は暑く冬は寒い…。その原因は断熱・気密性能が低いことにあります。今でこそ断熱性能が大事だということが知られるようになりましたが、下のグラフを見ても分かるように、2022年時点で既存住宅の24%が昭和55年基準に満たない無断熱等の住宅で、2025年4月から新築住宅に義務化される「省エネ基準」(平成28年基準)に適合している(平成28年基準)住宅はわずか18%と、既存住宅の断熱性能は未だ極めて低いのが現状です。
当然、断熱・気密性能が低いので、隙間から熱が流入出し、いくら冷暖房設備を稼働しても冬は寒く夏は暑い家になります。冷気や暖気が建物の隙間から外に流出し、外の冷たい・熱い空気が隙間から室内に侵入するため、冷暖房をフル稼働し続けなければ快適な室温が保てません。結果、光熱費がたくさんかかる家になります。
また、冷暖房している部屋とそうでない部屋の温度差が原因で起きるヒートショックなど、健康被害のリスクも大きくなります。
断熱性能が低い家は健康被害のリスクが高くなる!
部屋間の温度差など、急激な温度変化によって起こる「ヒートショック」。暖かい場所から急に寒い場所に行くと、下の図のように、血管が収縮して急激に血圧が上昇し、心臓発作や心筋梗塞、脳梗塞などを引き起こしてしまうことがあります。
特に怖いのが冬の入浴時です。暖かいリビングから寒い脱衣室へ移動して服を脱ぎ、熱いお湯に入ることで血圧が乱高下。ヒートショックを引き起こしやすくなります。断熱リフォームをすることで浴室・脱衣室を暖かくできれば、このヒートショックのリスクを軽減できます。
家づくり学校アドバイザーが極寒の実家を断熱リフォーム!サーモ画像による検証結果を紹介
「家づくり学校」では来校される皆さんに断熱性能を高めることのメリットをレクチャーでお伝えし、断熱性能の高い、冬暖かい家の見学・体感に出かけていただいています。百聞は一見に如かず、ということで、アドバイザーの実家を断熱リフォームした際のビフォアアフターをご紹介!
極寒のリビングで高齢の母が寒さを耐え忍んでいた実家。左側の青が際立つサーモ画像がリフォーム前の「無断熱」のものです。エアコンとファンヒーター、ハロゲンヒーターの3台で暖房しているにもかかわらず、リビングは極寒!!室温はもちろん、床や壁の表面温度も低く、いつヒートショックが起こっても不思議ではない状況でした。こんな寒々とした家、真冬には帰りたくないですね…。そこで、全ての部屋に内窓を設置し、床下にはウレタンフォームという断熱材を吹き付けました。
対して右側は、内窓の設置と床下にウレタンフォームを施工した後のサーモ画像です。部屋全体が温度が高いことを示す「赤」になっていますね。内窓を設置した瞬間にプラス3℃の室温上昇、そして、床下断熱の施工が終わった瞬間にプラス3℃。リフォーム後、室温がトータルで5~6℃上昇し、とても暖かく快適になりました。
窓リノベの補助金も活用
2025年度、国は省エネ効果の高い窓やドアなどの開口部の断熱と給湯器の高効率化を中心に、すべての世帯を対象とした幅広い省エネ工事に対して補助事業を行っています。
例えば「先進的窓リノベ2025事業」。これは高い断熱性能の窓に改修することで、一戸当たり最大200万円を補助する事業です。今回の内窓の設置においては、2024年度に実施された「先進的窓リノベ2024事業」を利用し、93万円の補助金をもらえました。補助額は、補助対象工事により設置する製品の性能と大きさ、および設置する住宅の建て方に応じた、製品ごとの補助額(定額)の合計となりますが、住環境が快適になるだけではなく補助金までもらえるのですから、使わない手はないと思います!
既存窓の内側に新たに内窓を新設する他にも、既存窓のガラスのみを取り外し、既存サッシをそのまま利用して複層ガラス等に交換する工事や既存窓のガラスを取り外し、既存窓枠の上から新たな窓枠を覆い被せて取り付け、複層ガラス等に交換する工事、玄関ドアなどの交換なども「先進的窓リノベ2025事業」において補助されます。
断熱・気密性能を高めて快適かつ省エネな暮らしを実現
壁や床下、天井、屋根などに断熱材を施工する断熱リフォームは、既存の壁をはがすなど大規模なリフォームとなることも多いですが、快適に暮らせるようになるのはもちろん、光熱費が削減できるなどメリットも大きいです。

断熱材はただ入れればいいのではなく、隙間なく施工することが不可欠。断熱・気密性能がそろってこそ快適な住まいになる
家全体を断熱リフォームするのが予算的に難しい場合や一定の空間しか使っていない場合は、LDKやトイレ、浴室・洗面室、寝室など、部分的に断熱リフォームを行う「ゾーン断熱」という方法もあります。
断熱リフォーム 4つのポイント
天井・屋根・壁・床の断熱
天井や屋根、壁、床下に断熱材を施工して気流止めを行うことで断熱・気密性能を高めることが大事です。下の写真は、床下にウレタンフォームという断熱材を吹き付けた断熱リフォームの様子。左側がリフォーム前、右側がリフォーム後ですが、サーモ画像でもその効果は一目瞭然。室内は底冷えもなくなり、暖房効率もよくなりました。
パッシブデザインの導入
夏は日射熱が室内に入らないように軒や庇の角度を計算し、冬は逆に日射熱を取り込んで室内を暖める、風の通り道を踏まえて窓を設置し、高窓などで室内の熱を排出するなど、太陽熱や風の通り道を考慮して設計し、快適な住まいにする手法である「パッシブデザイン」を採用することも必要です。太陽の熱も風も永久無料。自然の力をうまく取り入れることで、設備に頼り過ぎずに快適に過ごせる家になるのです。
パッシブデザインについては、こちらの記事もぜひお読みください
再生可能エネルギーの導入
屋根リフォームなどと併せて太陽光発電システムなどの再生可能エネルギーを導入することにより、自宅でエネルギーを創り出して使うことができます。
太陽光発電の導入には初期投資がかかりますが、国は太陽光発電の普及を進めるため、2026年度から10kW未満の住宅における買取価格を当初4年間は24円/kWh、5~10年目は8.3円/kWhとし、早期の投資回収ができるようにすることを決めました。2025年度の買取価格は15円/kWhmなので、導入を考えている方には導入の後押しとなるでしょう。
太陽光発電について詳しくは、こちらの記事もぜひお読みください
高効率設備への交換
古いエアコンなどの冷暖房設備や給湯設備、照明器具などを省エネ性の高いものに交換することで、使用エネルギーを大幅に減らせます。
家の中で最も熱が出入りしやすいのが「窓」。高断熱窓へのリフォームが効果的
家の中で最も熱の流入出量が多いのは「窓」。壁に比べて夏は約6倍の熱が入り込み、冬は約3倍もの熱が逃げています。例えば、既存のアルミサッシ窓を断熱性能の高い窓に交換したり、既存の窓の内側に新たな窓(内窓)を設置したりすれば、窓からの熱の流入出を抑えることができ、快適室温と省エネが実現できます。
窓リフォームは、最も手軽にできて、効果を実感しやすい断熱リフォームです。
さらに、高断熱窓に交換することで、冬の窓の悩みで多い「結露」の発生も防ぐことができます。ダニやカビの温床となり、アレルギー症状を引き起こす原因ともなる結露。この発生を抑えられれば、健康面でのメリットも得られますね。
まとめ
今回は断熱リフォームのメリットとそのポイントを解説しました。
断熱リフォームは構造体に手を入れる大掛かりな工事となるため、建物の状態によっては、リフォームするのではなく建て替えた方がよい場合もあります。リフォームする前に、まず専門家に建物診断を依頼することが不可欠です。特におすすめしたいのは、リフォームと建て替えの両方に対応できる住宅会社に相談することです。
両方に対応可能な住宅会社であれば、建物の状態や予算、ライフスタイルに応じて、中立的な立場でアドバイスをもらえます。もしリフォームか建て替えかがすでに決まっている場合は専門の会社を選んでもいいですが、迷っている場合は両方に対応できる会社に相談するのが賢明です。
「家づくり学校」では、信頼できる技術力の高い建築の専門家をご自宅に派遣することができます。リフォームか建て替えかで迷ったら、まずは「家づくり学校」にお気軽にお問合せください。
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