建売住宅は寒い?購入前の注意点とこれから必須となる断熱性能について解説
2024.11.12
2024.08.23
一般的な注文住宅に比べると安く購入できるのが建売住宅の大きなメリットですが、一方で「建売住宅は寒い」というネガティブなイメージを抱く人も多いようです。
この記事では、「建売住宅が寒いといわれる理由」や「寒い住宅で過ごすことで起こりうる弊害」、「これからの住宅には欠かせない断熱性能」など、住宅購入前に知っておくべきことを解説します。
この記事でわかること
- 建売住宅が寒いと言われる理由
- 建売住宅の購入前の注意点
- 建売住宅でもこれから必須となる断熱性能について
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1.建売住宅が寒いと言われる理由とは?
まず「建売住宅が寒い」というイメージが根強くある理由としては、主に下記の4つが考えられます。
そもそも建売住宅はどんな特徴があるか知りたい方は以下の記事をご覧ください。
関連記事>>建売住宅とは?費用相場やメリット・デメリット、注意点を解説
①断熱性能が低い
建売住宅が寒い原因として大きいものに断熱性能の低さが挙げられます。建売住宅では建築コストを抑えるために、低いグレードの断熱材を使用しているケースが少なくありません。
グレードの低い断熱材は価格が安いぶん、断熱性能も低いことが多いです。そのような断熱材は高性能なものに比べると「外気温(冬場だと外の冷気)」が室内に侵入しやすくなっており、同時に「室温(冬場だと暖かい空気)」が外に逃げやすい状態にもなっています。建売住宅が寒いといわれる根拠の一つは、こういったところにあります。
なお、建売住宅の断熱材には「グラスウール」や「ロックウール」など繊維系断熱材(袋入り)が使われるケースが多いですが、こういった断熱材が悪いわけでありません。大切なのはいかに正しく施工するかです。
②断熱材の施工不良
断熱材は種類によらず「すき間なく丁寧に施工すること」がとにかく大切です。もし施工が雑で断熱材にすき間がある状態だと、そこから室内外の空気が出入りすることになります。そうなってしまうと冬場はせっかく暖めた部屋の空気が外に逃げてしまうことにもなり、断熱材を入れた意味がありません。
建売住宅では建築コストを抑えて提供することを優先するあまり、「職人(大工さん)のコストを下げる(=施工するための時間を短くする)」傾向も伺えます。そのため断熱材の施工に満足な時間が取れず、本来の断熱性能が発揮されない状態にある住宅も少なくない…という話も聞きます。
また、断熱材のすき間で空気の出入りが発生することは「壁内に急激な温度変化」をもたらすことに繋がり、結果として「壁の内側で結露が発生する」ことがあります。これは「内部結露」と呼ばれ、そのまま放置するとカビやシロアリの繁殖、木材の腐朽などが発生し、重大なトラブルにつながる可能性があるため注意が必要です。
③気密性能が低い
断熱性能とともに住まいの快適性や省エネ性、健康な暮らしに欠かせないのが「気密性能」です。
いくら断熱性能を高めても、気密性能が低い、つまり、家の中にすき間が多ければ室内の暖気・冷気は外に逃げ、外気が流入します。そうなってしまうと冬寒くて夏暑い、光熱費がたくさんかかる家にもなってしまいます。
※前段で述べた「断熱材の施工不良」は、まさに「気密性」を下げることに繋がります。
全ての建売住宅が気密性能の低い家と断言はしませんが、気密性能が低く、室内でも寒さを感じてしまうような家がまだまだ存在していることも事実です。建売住宅を見学する際には「断熱・気密についても販売業者に聞いてみる」ようにしましょう。
特に「閉じられたドアや窓、壁面のコンセントボックス近く」などで「空気の出入りを感じることがないか?(=見えない部分にすき間がないか?)」については、実際に現地で確認されることをおすすめ致します。
関連記事>>高気密高断熱の住宅とは?メリット・デメリット、後悔しないためのポイントを徹底解説!
④換気システムの種類による影響
建売住宅で寒さを感じる原因の一つとして「24時間換気システム」の影響もあります。
改正建築基準法が施行された2003年7月以降、全ての住宅には「24時間換気システムの設置」が義務付けられました。24時間換気扇を回し続けることによって、室内と室外の空気が2時間に1回入れ替わる設計になっており、シックハウス症候群の抑制に効果があるとされています。
換気扇には外気をそのまま取り込む「通常タイプ」と、外気を取り込む際に室内の空気と熱を交換する「熱交換型」があります。
換気扇の種類 | 取り込む空気(冬) | 室内への給気温度(冬) | 光熱費への影響 |
通常タイプ | 外気そのまま | 冷たい空気 | 大 |
熱交換型 | (室温と熱交換した)温めた空気 | 室温に近い空気 | 小 |
「通常タイプ」だと冬場は外の冷たい空気をそのまま給気することとなるため、室温の下降にも少なからず影響します。また、給気のたびに室温が下がることは「暖房効率の低下」にも繋がってしまいますので、光熱費にも影響が出てきます。
一方で「熱交換型」の換気扇では、冬場は室内から排出する空気の熱を利用して、室内へ給気する外気を温めます(熱交換)。その結果、給気のたびに室温に近い暖かい外の空気を取り込むことになるため、室温も下がりにくいです。「暖房効率の低下」もなく、光熱費への影響もほとんどありません。
冬場の室内を暖かく保つためには「通常タイプ」より「熱交換型」の方が最適です。しかしながら性能が優れている分、価格も相応に高くなっています。一般的な建売住宅では建築コストを抑えるため「熱交換型」ではなく「通常タイプ」を使用しているケースが圧倒的に多くなっています。
建売住宅を検討する際には「換気システムの種類」についても、確認されることをおすすめします。
※ただし、「熱交換型」の換気システムを使っていれば冬場でも必ず室内が快適になる…というわけでもありません。それ以上に「住宅の施工精度」が大切です。
関連記事>>家は見えない所が一番大切
2.建売住宅の断熱性能は低い?寒い家の危険性について
ここまでは建売住宅が寒いといわれる原因を挙げてきましたが、ここからは「寒い家での暮らしにどのようなリスクがあるか?」や「リスクを踏まえてどういう基準で家づくりを進めた方がよいのか?」ということについて解説します。
①寒い家における「ヒートショック」の危険性
冬場に室内が寒いと快適に過ごせないことはもちろん、住まい手の健康にも大きな影響を与えます。近年ニュースなどでも取り上げられることが多い「ヒートショック」もその一つです。
ヒートショックとは「急激な温度変化によって人体の血圧が上下に変動させられ、それによって疾患などの悪影響を及ぼされること」を示します。日本でも年間17,000人もの方がヒートショックによって亡くなっています。
ヒートショックは「20℃以上の温度差」が発生要因となります。
断熱性能が低くて寒い家だと廊下を通ってお風呂場や脱衣所、トイレなどの部屋間移動をする際にも「温度差による血圧変動」が発生しているため、かなり注意が必要となります。建売住宅でもヒートショックが起こらないような「寒くない家」を購入するようにしてください。
関連記事>>後悔しない家づくりのポイント:住宅内で引き起こされる事故「ヒートショック」とは?
②寒い家で起こりうる健康被害
冬場に寒い家に住まうということは、ヒートショック以外にも健康被害を被る危険性があります。
図:断熱・気密性能の低い寒い家
例えば、人間は体温維持のために摂取するエネルギーの75%以上を使っています。屋外はもとより屋内でも寒ければ寒い場所にいるほど、エネルギー消費量は増えます。つまり「部屋間の温度差が大きくなるような寒い家」に住むとなれば、それだけ余分にエネルギーを必要とすることにもなります。
本来、消費しなくてもよいエネルギーを使ってしまうということは、体のだるさや免疫力の低下にも影響してきます。寒ければ寒い家に住むほど、健康を害する危険性が高まる…ということなのです。
逆に「断熱性能が優れた暖かい家」に住むことで、気管支喘息や手足の冷え、皮膚炎、アレルギー性鼻炎などの改善効果がみられた例もあります。暖かい家に住むメリットは、ヒートショックや免疫力低下による病気の予防だけでなく、これらの療養に伴う医療費負担も軽減できるという点にもあるといえます。
建売住宅に限らず家づくりを検討する際には「寒くない、暖かい家」にすることを忘れないようにしてください。
③寒い家では光熱費もかかる
寒い家で暮らすということは、光熱費がかさむことにも繋がります。
寒い家だと室内を暖めるための暖房がエアコンだけでは足りないかもしれません。石油ストーブや石油ファンヒーター、部分的に暖める電気ストーブ、足元を暖めるホットカーペットなど、さまざまな暖房機器を併用して冬の寒さを乗り切ることになる可能性もあります。
家の寒さの具合によっては「暖房機器の設定温度を高めにしないと室内が暖まらない…」ということも十分に考えられます。そうなってしまえば、ますますコストパフォーマンスの悪い、光熱費が余計にかかる暮らしが待っています…。
④断熱性能は「室温」で考えることが大切
前章でも「断熱性能」の重要性についてお伝えしました。その測り方としては後述の「断熱等級」や「UA値」というものもありますが、単純に「断熱性能によって、寒い冬もどれくらいの室温がキープできるのか?」という考え方もあります。
例えば欧米の多くの国々では「冬の室内を暖かくすること」を推奨しています。イギリスでは「室温が18℃未満になると健康リスクが高まる」としており、それを満たせないような建物にはリフォームなどの改善命令が出されるほど。加えて世界保健機構(WHO)の「住宅と健康に関するガイドライン」でも、「冬季の最低室温を18℃以上」ということを強く勧告しています。
図:断熱・気密性能が高い、冬暖かい家
日本ではまだまだ「室温」に対する認識が低いのが現状ですが、長く健康に暮らすためには「適切な室温」が不可欠です。そのためにも断熱性能に優れ、冬季でも室温18℃以上をキープできるような住宅で暮らすのが最適であるといえるでしょう。
また断熱性能にはレベルがあり、どの基準で建てるか?によって「室温」は大きく変わってきます。健康に暮らせる家にするためにも「室温」で断熱性能を選ぶという観点を持つことも大切です。
建売住宅が必ずしもすべて寒いというわけではありませんが、購入時にこういった情報を知らずして選択してしまうことで後悔の原因につながります。以下の記事も参考にして後悔のない選択をしてください。
関連記事>>建売住宅の購入時に後悔しないための注意点
3.建売住宅の断熱性能のチェックポイント
「安い建売住宅だから、冬が寒いのは仕方ないこと」と完全に割り切った上で購入するのであれば問題ありませんが、それでも「新しい住まいでの暮らし」が“期待を遥かに裏切るレベル(=ものすごく寒い家)”だった場合は、きっと家づくりを後悔することになると思います。
そんな悲しいことにならないためにも、ここでは「建売住宅を購入する際に注意すべき断熱性能のチェックポイント」について説明します。
①断熱等級、UA値
建売住宅を購入する際には「断熱性能」をチェックしましょう。
そのためにもまずは「UA値」を確認してみてください。「UA値」は住宅の断熱性能を表す数値の1つであり、「外皮平均熱貫流率」とも呼ばれます。また「購入予定の住宅が満たす断熱レベル」を把握するためにも、「断熱等級」についても聞いてみましょう。
当たり前ですが、マイホームとは長い付き合いになります。断熱性能を客観的な数値で表した「UA値」や「断熱等級」といったものも当初から把握しておくことは、将来リフォームやメンテナンスを行うことになった際、効率よく計画を立てられることにも繋がります。
※UA値や断熱等級、これから求めるべき断熱性能については以下の記事で解説しています。
関連記事>>HEAT20とは?G1・G2・G3レベルやこれから求めるべき断熱基準を解説
②断熱材の種類・施工状況
先にも述べた通り建売住宅が「寒い」と言われる理由の一つには「断熱材のスペックが低いこと」も挙げられます。なので購入予定の住宅に使われている「断熱材の種類」についても、事前にしっかりと確認しておきましょう。
断熱材としては「グラスウール」や「ロックウール」など繊維系のものが多数を占めており、次いで「ポリスチレンフォーム」など発泡プラスチック系のものが多い印象です。繊維系は壁や天井で、発泡プラスチック系はボード状のものが床下でよく使われています。
使用される断熱材は住宅会社によって違ってきます。また工法としても外壁と内壁の間の空間に断熱材を入れる「充填断熱工法」や、柱などの構造体の外側に断熱材を張り付ける「外張断熱(付加断熱)工法」などがあり、それらでも使用される材は異なってきます。
また建売住宅でも、断熱材の施工状況をチェックできる箇所があります。それは「小屋裏(天井)」や「床下」の断熱施工です。購入前に見せてもらえるのならば「断熱材にすき間はないか?」「施工されていない部分はないか?」「配線周辺は丁寧に作業されているか?」を確認してみてください。
もし仮に断熱材の施工が雑になっていた場合、その住宅は本来の断熱性能が発揮されず、寒い住まいである可能性が高いです。
③窓やサッシの種類
その建売住宅で使われている窓やサッシの種類についても確認しておきましょう。
住宅で熱の出入りが一番大きくなるのは、窓やサッシなどの開口部です。断熱性能もフレームに使われる素材や窓ガラスとの組み合わせによって異なります。
断熱性能 | サッシ | 窓ガラス |
高い | 樹脂サッシ | トリプルガラス |
やや高い | アルミ樹脂複合サッシ | 複層ガラス |
低い | アルミサッシ | 単板ガラス |
上記表の中で断熱性能が一番高くなるのが「樹脂サッシ」と「トリプルガラス」の組み合わせです。高性能なものを使用すれば外気温に左右されにくい暖かい家が実現できます。窓やサッシをチェックする際は「樹脂サッシ(フレーム)になっているか?」や「ガラスがトリプルや複層になっているか?」などをチェックしましょう。
④気密性能(C値)
前章でもお伝えしましたが、住まいの快適性や省エネ性を実現し、健康な暮らしを手に入れるために「断熱性能」と共に欠かせないのが「気密性能」です。
「気密性能」は1平方メートルに何平方センチメートルのすき間があるかを表す「C値(相当隙間面積)」という指標で表されます。断熱性能は住宅の設計段階においても計算で出すことができますが、C値は「気密測定器」を使って実際に現地で測定をしなければ確認することができません。
写真:気密測定の様子
全く同じ間取りで、全く同じ建材を使って建てられたとしても、C値は施工精度によって全く異なる場合があります。なので正確に把握するためには、一棟ごとの実測が必要となります。
C値にはUA値のように国が定めた目安がありません(=測定は義務化されていません)が、「C値が1.0以下」が高気密住宅であるという目安になっています。
ただし残念ながら建売住宅でC値にまでこだわって建てられた物件は、ほとんどありません。もし「気密性能」が気になった場合には担当営業やスタッフの人に「この家のC値はいくらか?」「気密測定をきちんと行っているか?」と質問してみることをおすすめします。きちんと気密測定を行った上でC値1.0以下のレベルを確保しているのであれば、その家では冬でも暖かく快適に暮らせる可能性が高いでしょう。
⑤内覧時に体感してみる
「UA値」や「C値」といった性能数値や使用している断熱材の種類などは問い合わせるとわかりますが、その家で「寒さを感じるか?感じないか?」といった感覚は、人それぞれに違います。なので「自分の体で実際に体感する」ことも大切になってきます。
それでも実際に訪れたからといって、全てが完璧に分かるわけでもありません。暑い夏や寒い冬はともかくとして、比較的温暖な時期に見学した場合だと「あまり住宅性能がわからなかった…」ということもあるでしょう。例えば真冬に見学した際でも「建物内に熱源が無く、日射が何日も取得できてない状態」であれば、「震えるほどの寒さを感じた…」ということもあり得る話です。
ただいずれにせよ、購入したいと思う建売住宅は必ず見学させてもらい、「自分にとって快適かどうか?」を自分自身の五感で体感するようにしましょう。加えて見学の際に不明点があれば、なんでも遠慮することなく聞いておくことが肝心です。
また、建売住宅を購入時には注文住宅との比較・体感して判断することもおすすめします。建売住宅と注文住宅の比較は以下の記事で解説しています。
関連記事>>注文住宅と建売住宅の違いとは?価格や特徴を比較!
4.まとめ
本記事では建売住宅は寒いといわれる原因や、寒い住宅で起こる弊害、断熱について知っておきたいことなどについて解説しました。
住宅が寒い原因としては、総じてそれが持つ住宅性能によるところが大きいようです。低コストでの販売を重視する建売住宅では、低グレードの断熱材の使用や効率とスピード重視の施工などによって、性能面はどうしても劣ってしまう傾向が高いようにも思えます。
「建売住宅は寒い」というイメージが定着しているのは、これまでに述べてきた様々な理由によるものと考えられます。その理由までしっかり理解し納得した上で、建売住宅を購入するようにしましょう。
家づくりは千差万別です。人によって住宅に求めるものや理想の住まいのカタチは全く異なりますし、絶対的な正解というものもありません。ただそれでも『後悔しない家づくり』を実現するためには、注文住宅にせよ建売住宅にせよ、普遍的に押さえておくべきポイントというものはあります。
ネットや書籍などでそういった情報を収集することも大切ですが、情報過多の現在では「結局、どうすればよいの…?」と迷ってしまわれる方も少なくありません。
家づくりに迷われたら、ぜひお近くの家づくり学校へご相談ください。家づくり学校のアドバイザーがお客さまと共に「家づくりの基準」を作るお手伝いをさせていただきます。
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