一次エネルギー消費量とは?計算方法やその削減方法について解説!
2024.02.17
2023.12.16
昨今の住宅業界においては「省エネ住宅」や「ゼロエネ住宅(ZEH住宅)」という言葉が声高に叫ばれています。
特に2025年からは「省エネ基準の適合義務化」ということもあり、家づくりを検討する際は「省エネ住宅」という言葉を耳にしないことがないといっても、過言ではありません。
「省エネ住宅」の実現にあたっては「外皮性能(住宅の窓や外壁など断熱性能の評価基準)」と「一次エネルギー消費量(住宅内でのエネルギー消費量に関する基準)」の2つの基準を満たす必要があります。
この記事では「一次エネルギー消費量」について着目した上で、なるべくわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
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この記事を読んでいただきたい人
- 省エネ住宅を建てることを検討している人
- 一次 エネルギー消費量について知りたい人
一次エネルギー消費量とは?
「一次エネルギー消費量」とは「住宅が一年当たりに消費するエネルギー量(MJ:メガジュール/年)」のことを指します。住宅で使用する冷暖房機器や換気設備、給湯機器や照明器具などのエネルギーを合計したものとなり、いわゆる「年間の光熱費」と言い換えることもできます。
「一次エネルギー」と「二次エネルギー」
「一次エネルギー」というのは「自然から取得できるエネルギー」のことを指し、「電気やガスなどのもとになるエネルギー」とも言い換えることができます。
具体的には石油や天然ガス、太陽光や原子力などによって得られるエネルギーのことを示します。「一次エネルギー」におけるエネルギー単位はどのエネルギーも共通であるため、いずれも「MJ(メガジュール)」や「GJ(ギガジュール)」で表すことができます。
その「一次エネルギー」を転換・加工することで得られるエネルギーというのが「二次エネルギー」です。具体的には電力や都市ガス、プロパンガス、灯油などが相当します。
※例えば発電所では『石炭や天然ガス(一次エネルギー)』を原料とすることで『電力(二次エネルギー)』を得ることができます。
「二次エネルギー」におけるエネルギーの単位は『電気』だとKWH(キロワットアワー)、『ガス』だと㎥(立法メートル。リューベとも)、『灯油』だとL(リットル)とそれぞれのエネルギーによって異なります。
「一次エネルギー消費量」の算出方法
家庭で使用する設備機器も色々ありますが「冷暖房機器」である『エアコン』は電力(KWH)、「給湯機器」である『ガス給湯器』はガス(㎥)という風にそれぞれの機器で使うエネルギーは「二次エネルギー」となっているため、計量単位はバラバラです。
なので設備機器ごとのエネルギー消費量を厳密に比較するためには、一旦「二次エネルギー」を「一次エネルギー」までさかのぼり、それぞれの計量単位をMJやGJに揃える必要があります。
そうすることで設備機器ごとの「一次エネルギー消費量」は算出でき、同一指標で比較することができるようになる…というわけです。
一次エネルギー消費量の等級について
住宅が1年間に消費するエネルギー量を表す基準である「一次エネルギー消費量」には、2013年に「等級(1~6)」が制定されました。等級の数字が大きいほど省エネ性能が良いことを示します。
加えて「一次エネルギー消費量の等級」は、「設計一次エネルギー消費量」÷「基準一次エネルギー消費量」で求めることができる「BEI(Building Energy Index)」という数値で判断されます。
「BEI」が小さいほどエネルギー消費量が少なくなり、等級は高くなってきます。現代の家づくりにおいては、国が定める省エネ住宅の基準に則るためには「一次エネルギー消費量等級4以上」で適合することが求められます。
因みに「等級4のBEI」は「1.0以下」、「等級5のBEI」は「0.9以下」となっています。等級5に適合するためには等級4より一次エネルギー消費量を10%以上削減する必要があります。2022年の4月に新設された「等級6のBEI」は「0.8以下」であり、等級4よりも20%以上の削減が求められるなど、さらに厳しい要求水準となっています。
<一次エネルギー消費量等級>
等級 | 要求値(BEI) |
等級6(2022年4月に新設) | BEI=0.8以下 |
等級5 | BEI=0.9以下 |
等級4 | BEI= 1.0以下 |
※参考:国土交通省資料「省エネルギー性能に係る上位等級の創設」
「設計一次エネルギー消費量」と「基準一次エネルギー消費量」の違い
「BEI」の算出で利用した「設計一次エネルギー消費量」と「基準一次エネルギー消費量」の2つの指標については、それぞれの持つ意味合いが異なります。
「設計一次エネルギー消費量」
⇒建物の設計段階で予測されるエネルギー消費のことを表します。
「基準一次エネルギー消費量」
⇒特定の建築基準や法令に基づいて設定されるエネルギー消費の基準値を表します。
簡潔にまとめると「設計一次エネルギー消費量」は建物の設計段階での予測エネルギー消費量であり、一方で「基準一次エネルギー消費量」は法令や基準に基づく建物の最大許容エネルギー消費量ということができます。
一次エネルギー消費量の計算方法
▲手計算で行う
以下は電気のエネルギー源を考慮して手計算で実施した単純な例です。
●「電気の消費量:5000 kWh」とした場合
⇒一次エネルギー消費量への「換算係数(※):2.8」と想定すると、「5000kWh × 2.8 =14000kJ」となり、「電気の消費量:5000 kWh」の「一次エネルギー消費量」は「14000kJ」と置き換えることができます。
※上記の「換算係数」は厳密にはもっと複雑な計算が必要です。あくまで目安として参考ください。
▲計算プログラムを活用する
ウェブサイトで公開されている計算プログラムを活用すれば、「換算係数」を使って計算する場合と違い、より詳細かつ具体的に一次エネルギー消費量を求めることもできます。
そもそも一次エネルギー消費量はなぜ重要な指標なのか?
住宅建築において「一次エネルギー消費量」が重要な指標となる理由は、主に以下の点に起因します。
①エネルギー効率の評価として
「一次エネルギー消費量」自体、その建物が利用するエネルギーの総量を示す指標となりえます。よって効率的なエネルギー利用を促進できているか?ということや、その建物がエネルギーを効果的に消費できているか?ということを客観的に評価するためにも有用です。
②持続可能性の観点から
昨今、声高に叫ばれる環境問題。「一次エネルギー消費量」の低減は温室効果ガスの排出削減や資源の節約に寄与します。環境への負荷を低減すると共に、建築物自体の持続可能性を高めるためにも有用な指標となります。
③ランニングコストの削減
住宅の「一次エネルギー消費量」が低いほど、住民が支払う光熱費が削減され、ランニングコストが低減します。エネルギー効率の高い住宅は、住民にとって経済的なメリットがあります。
総じて「一次エネルギー消費量」の管理は、環境への影響の軽減と経済的な効益を追求する上で、持続可能な住宅建築の重要な要素となっていると言えます。
一次エネルギー消費量を抑えることによる4つのメリット
住宅の「一次エネルギー消費量」を抑えつつ、「外皮性能(外皮基準)」を高めることも加味すれば、結果として「省エネな家づくり」を実現することに繋がってきます。
そのような家づくりを実現するメリットには、以下のようなものが挙げられます。
①環境への配慮
「温室効果ガス排出の削減」
低い一次エネルギー消費は、エネルギーの生産や使用に伴う温室効果ガスの排出を削減します。これによって気候変動への影響も減少し、地球温暖化の緩和に寄与します。
「大気汚染の低減」
一次エネルギーの生産や使用には、燃焼による汚染物質の排出が伴います。エネルギー消費を削減することは大気中への汚染物質の放出が減ることにも関係します。
「天然資源の節約」
一次エネルギー消費が少なくなればなるほど、エネルギー生産に使用される天然資源の節約に寄与します。
②光熱費が安くなる
「エネルギー効率の高い機器と設備の導入」
低い一次エネルギー消費を目指す際には、よりエネルギー効率の高い家電や照明、給湯設備などの導入も欠かせません。それらによって光熱費の削減が期待できます。
「再生可能エネルギーの導入」
一次エネルギー消費の低減の一環として「再生可能エネルギー」の導入があります。例えば自宅の太陽光発電によって生成した電力を自家消費すれば、電力会社からの買電も減ります。そうなれば自ずと光熱費削減にも繋がります。
③年中快適に過ごせる
「高い省エネ性と優れた断熱性」
一次エネルギー消費を削減する住宅設計においては、同時に「外皮性能(外皮基準)」を高める設計を考慮することにもなります。高性能な断熱材などをしっかり施工すれば室内温度が安定して外部の気温変動に影響されにくくなります。その結果、年中快適に過ごせる住環境も実現できます。
④補助制度を利用できる
一次エネルギー消費量の削減を実現するために、国は様々な補助制度(補助金制度)を実施しています。以下は直近に実施を発表された代表的な制度です。
省エネ改修:高効率給湯器の設置
高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金【経済産業省】
⇒一定の基準を満たした高効率給湯器を導入する場合、機器・性能ごとに設けられた定額が支援される。
省エネ改修:高断熱窓の設置
断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業【環境省】
⇒高断熱窓(熱貫流率Uw1.9以下等、建材トップランナー制度2030年目標水準値を超えるもの等、一定の基準を満たすもの)への断熱改修工事に対する支援。1戸あたり最大200万円。
①省エネ改修:開口部・体等の省エネ改修工事/②高い省エネ性能を有する住宅の新築
質の高い住宅ストック形成に関する省エネ住宅への支援(仮称)【国土交通省】
⇒①住宅の開口部・壁等に対する一定の断熱改修やエコ住宅設備の設置等の省エネリフォームを行う場合、工事内容に応じた定額が支援される。
⇒②高い省エネ性能を有する新築住宅(長期優良住宅、ZEH住宅)の取得に対しての支援。子育て世帯・若者夫婦世帯を対象とし、長期優良住宅の場合は100万円/戸、ZEH住宅の場合は80万円/戸の補助金が交付される。
※参考:住宅の省エネ化の支援強化に関する予算案が閣議決定されました
一次エネルギー消費量を抑える方法について
現代日本の住宅建築において、一次エネルギー消費量を抑えるための方法は多岐にわたります。以下はその中でも代表的な方法です。
断熱性能を向上させる
住宅に高性能な断熱材を採用します。壁や屋根、床などにはグラスウールや硬質系ウレタンなど材質のいかんを問わず高性能なものを使用し、しっかりと丁寧に施工を行うことを欠かさずに。窓ガラスも断熱性を向上させるために「複層ガラス(ペア・トリプル)」や「Low-Eガラス」などの高性能サッシを導入します。
⇒住宅内の冷暖房効率が向上して冷暖房設備の使用頻度や時間が短縮されます。年間を通して室内温度の安定化も実現されることになります。
※断熱性能の向上において重要なのは良い部材を使うことよりもいかに「丁寧な施工」を行うか?ということにあります。下記コラムもぜひ参考ください!
高効率な冷暖房・給湯設備を採用する
住宅の設備機器にヒートポンプ技術などを使った高効率なものを採用します。具体的には冷暖房機器であればエアコン、給湯設備においてはエコキュートやハイブリッド給湯機の導入を検討します。
⇒電力やガスなどのエネルギーをより効率的に利用できるようになり、結果として冷暖房や給湯時のエネルギー消費を削減することができるようにもなります。
照明設備にLEDを採用する
冷暖房機器に次いで一次エネルギー消費量が大きいといわれるのが照明設備です。一年を通して使用しない時期がないこと、また基本的に住宅内の全エリアに設置されることからも一次エネルギー消費量が大きくなっています。
⇒白熱電球や蛍光灯などよりもエネルギー変換効率がよいLEDを全ての照明に採用すれば、設計にもよりますが照明による一次エネルギー消費量を20%以上削減することもできるようになります。
再生可能エネルギーを活用する
太陽光や風力、地熱といった地球資源の一部として自然界に存在するエネルギーを活用します。住宅においては太陽光利用が一般的であり、太陽の熱を利用してお湯を作る太陽熱温水器や、太陽のエネルギーで電力を作り出す太陽光発電パネルなどがポピュラーです。
⇒石油や石炭、天然ガスといった有限な資源である化石エネルギーを使用することなく太陽の力でお湯を使えたり、自家発電によって日中の電力供給をまかなえるようになります。再生可能エネルギーの導入は、環境への負荷軽減にも効果的です。
一次エネルギー消費量を抑えた家づくり⇒ZEH(ゼッチ)住宅!
一次エネルギー消費量を抑えた家づくりを実現する方法の一つに「ZEH(ゼッチ)住宅」というものがあります。
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)」の略語であり、高度な断熱化や高効率化を施して快適な室内環境を実現しながら、同時に大幅な省エネルギーを達成します。ZEH住宅では太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用し、一年間の一次エネルギー消費量の収支がネットで概ねゼロ以下になるよう設計されています。
簡潔に言えば、ZEH住宅は消費エネルギーを減少させつつ、再生可能エネルギーを活用して生成エネルギーを増やし、使うエネルギーよりも生成エネルギーが上回るよう設計された住宅なのです。
国も「2030年からは新築住宅の平均でZEH住宅の実現を目指す」ことを予定しています。なので今まさに住宅建築を検討されている方には、ZEH水準以上のお家づくりを目指していきましょう。
参考:国交省ウェブサイト「家選びの基準変わります」
まとめ
この記事では一次エネルギー消費量に関して、その計算方法や削減方法についてなどについてお伝えしました。
家づくりというものは、調べれば調べるほど専門的な単語や用語が出てくることもあってか、結局のところ何をどうすればよいのか?判らなくなって迷われてしまう方も少なくありません。
だからといって何も調べず知ろうとせず、勢いのままで進めて良いことは何一つとしてないことも事実です。家づくりにおける後悔や失敗というのは、そのほとんどが「知らずして進めた」ことにあります。
なので、そろそろ家づくりをしたい!と思われたら、まず最初の一歩に「家づくり学校」のセミナーや個別相談をご利用ください!家づくりにおいて大切なことを、なるべくわかりやすく噛み砕いて皆様にお伝えさせて頂きます。
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