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注文住宅の予算と費用

「固定金利」と「変動金利」金利の違いでどのくらい変わる?

今井 園美

今井 園美

「固定金利」と「変動金利」金利の違いでどのくらい変わる?

日銀による政策金利0.15%引き上げの発表以降、住宅ローン金利の上昇を心配する相談が増えました。

政策金利の引き上げが、なぜ、住宅ローンの変動金利に影響するのか?

①日銀が政策金利を引き上げる

②住宅ローンの変動金利の指標となる「短期プライムレート」が引き上げられる
※「短期プライムレート」とは、金融機関が優良企業向けの短期貸出(1年未満の期間の貸出)に適用する最優遇金利

③短期プライムレートの引き上げと同時に変動金利の基準金利も引き上げとなる

これまでメガバンクの住宅ローン変動金利の基準金利は、この政策金利に連動する短期プライムレートに1%上乗せした値に設定されてきました。

変動金利はすぐにでも上がっちゃうの?

メガバンク3行の2024年9月の変動金利を見ていきますね。

★三井住友銀行 
基準金利 2.475%(変動なし)
新規借入金利 0.475%(変動なし)

★三菱UFJ銀行
基準金利 2.475%(変動なし)
新規借入金利 0.345%(変動なし)

★みずほ銀行
基準金利 2.475%(変動なし)
新規借入金利 0.375%(変動なし)

9月に大きな変動はありませんでした。

ただ、ネット銀行のauじぶん銀行、PayPay銀行が10月から基準金利を引き上げる予定になっています。

いよいよ10月からは変動型の金利も引き上げられる見通しと言われています。

そうはいっても、住宅ローンの変動金利は、金融機関同士の金利競争により下がり続けてきたという経緯があります。新規貸し出しの住宅ローンに適用される金利を、上げる銀行、上げない銀行、判断は分かれることになるかもしれません。

すぐに上がらなかったとしても、今後の変動金利の動向は注視していく必要がありそうですね。

固定金利も上がっちゃうの?

では、固定金利はどうなるの?気になるところです。

9月の固定型の金利は長期金利の低下を踏まえて引き下げられました。

2024年9月【フラット35】の新機構団信付(借入期間21年以上35年以下、融資率9割以下)の最頻金利は1.82%

8月の同条件最頻金利1.85%から0.03%下がったことになります。

2024年9月の全期間固定金利(35年固定)

フラット35   1.82%~(8月)1.850%~
みずほ銀行   1.76%~(8月) 1.860%~
三菱UFJ銀行 1.75%~(8月)1.950%~
三井住友銀行   2.60%~(8月)2.630%~
SBI新生銀行 1.55%~

2024年9月の変動金利 

みずほ銀行    0.375%~
三菱UFJ銀行    0.345%~
三井住友銀行 0.475%~
SBI新生銀行  0.290%~

「固定金利」と「変動金利」の金利差は拡大している⁉金利差による返済額の差は?

この金利差が、返済額にどれくらいの影響を及ぼすのか?

9月の固定金利が1.55%~2.60%、変動金利が0.290%~0.475%、その差は1.26%~2.0%超
固定金利の代表格【フラット35】において、今までで一番金利が低かったのが、2019年9月~10月の1.11%(機構団信加入)です。
その当時の変動金利の基準金利は今と同じ2.475%、返済時に適用される金利も今とほぼ同じ水準でした。つまり、その頃の固定金利と変動金利の金利差は1.0%以下。このことから考えると、少しずつ金利差は拡大していると言えそうです。

ではこの金利差による返済額の差がどのくらいになるのか?試算してみます。

(例)
借入額:4,000万円
借入期間:35年間
返済方法:元利均等

全期間固定金利

★フラット35
金利:1.82% →毎月返済額:128,840円

35年間の総支払利息は
約1,411万円

【フラット35】子育てプラスを利用した場合
(例)
家族構成 子ども1人で1ポイント
住宅性能 【フラット35】S(ZEH)で3ポイント
維持保全 長期優良住宅で1ポイント
合計で5ポイント

当初5年間金利 年1.00%引き下げ→0.82%
毎月返済額:109,589円
6~10年目金利 年0.25%引き下げ→1.57%
毎月返済額:121,845円
11年目~金利   引き下げなし  →1.82%
毎月返済額:125,444円

35年間の総支払利息は
約1,151万円

変動金利

今後の金利の変化は誰にも予測はできませんので仮の前提で試算しています。

★三菱UFJ銀行
9月の住宅ローン変動金利:0.345%~

短期プライムレートの0.15%引き上げに伴い、
住宅ローン基準金利:2.475%→2.625%となる可能性があります

仮に最大優遇幅▲2.13%は変わらない前提であれば→10月の住宅ローン適用金利:0.495%となります。この金利を元に試算してみます。

ケース①
金利0.495%はずっと変わらない

1~ 35年:0.495% →毎月返済額:103,745円

35年間の総支払利息は
約357万円

ケース②
5年ごとに0.25%ずつ上昇していく

1~   5年:0.495%→毎月返済額:103,745円
6~ 10年:0.745%→毎月返済額:107,594円
11~15年:0.995%→毎月返済額:110,893円
16~20年:1.245%→毎月返差額:113,603円
21~35年:1.495%→毎月返済額:115,689円

35年間の総支払利息は
約697万円

ケース③
5年ごとに0.50%ずつ上昇していく

1~   5年:0.495%→毎月返済額:103,745円
6~ 10年:0.995%→毎月返済額:111,532円
11~15年:1.495%→毎月返済額:118,359円
16~20年:1.995%→毎月返差額:124,085円
21~35年:2.495%→毎月返済額:128,575円

35年間の総支払利息は
約1,060万円

この程度の上昇率であれば、総支払利息は変動金利の方がまだまだ少なくてすみそうです。そう考えると、低金利な変動金利は魅力的に思ってしまいますよね。

ですが、この試算はあくまでも住宅ローンのみ、生活費や教育費の変化などは試算に入っていません。
金利の変動が、その後の暮らしにどういう影響があるのか?今度は、ライフシミュレーションを作成して見ていきましょう!

変動金利の影響をライフシミュレーションで比較してみましょう!

わかりやすくするために、住宅ローンの金利以外はすべて同じ条件でシミュレーションしています。
(例)
夫(34歳)年収460万円会社員
妻(31歳)年収240万円会社員
お子さま1人(2歳)、子どもは
もう一人欲しい

借入金額:4,000万円
借入期間:35年間
返済方法:元利均等

ケース① 金利0.495%はずっと変わらない

特に赤字に陥った期間はありませんでした。ただ、将来必要となる教育資金の準備は早めに検討しておきたいところです。

ケース② 5年ごとに0.25%ずつ上昇していく

お子さまの大学進学時期と老後が赤字に陥ってしまいました。教育費のかかる時期に金利が上昇していっていることが影響しているようです。早めの対策が必要となります。

ケース③ 5年ごとに0.50%ずつ上昇していく

家を建てた直後のキャッシュフローに問題はありませんが、出費の増える時期に住宅ローンの金利上昇が重なったことで家計が破綻状態に陥っています。このまま家づくりを進めることはあまりにも危険!計画の見直しが必要となりそうです。

上記のシミュレーション表からも見えてくるように、変動金利を選んだ場合、今の家計への影響はなかったとしても、今後、金利がどこまで上がるのか?上がるタイミングによっては、20年後の家計に大きく影響を及ぼす可能性もあるということです。

それでも低金利が魅力の変動金利を選びたい!
そんな方は、どのような点に注意しておく必要があるのでしょうか?

変動金利を選びたい!金利上昇リスク対策は?

変動金利とは?

変動金利のメリットは、他の金利タイプより金利水準が低いことです。同じ借入額・同じ返済期間であれば、金利は低いほど毎月の返済額を抑えることができます。

変動金利のデメリットは、金利が上昇すると毎月の返済額が増えて家計を圧迫しかねない点です。

「変動金利型」の特徴

●金利は、半年に1回(4月と10月)見直しが行われる
●毎月の返済額は、5年に1回見直しが行われる(=5年間変わらない):5年ルール
●返済額の変動幅は従前の返済額の1.25倍まで:125%ルール

「変動金利型」のリスク

元利均等返済では、毎月の返済額の内訳は「元金の返済に充てられる部分」と「利息の支払いに充てられる部分」に分けられ、半年ごとの金利の見直しによってその割合は変わります。
金利が上昇すると利息の割合が増え、元金がなかなか減らない状況に陥るということです。


さらに、金利の急上昇により利息分の割合が増加して、計算上の毎月利息額が毎月返済額を超えてしまった場合には「未払利息」が発生します。

 

未払利息は、発生時に引き落しが行われなかったからといって支払いが免除されるものではありません。後日、何らかの方法で精算(支払い)する必要があります。未払利息の発生は、返済計画に大きな支障を及ぼしかねない変動金利型のリスクといえます。

これらは「金利の上昇」によって起こるリスクです。
ですが、今後、金利が上がるか上がらないかということに明確な答えを出すことができる人はいません。

金利上昇に備えるには?

金利が上がった場合を想定して計画を立てること!
つまり金利が1%~2%上がったとしても耐えることができるように、その対策を考えておくことが重要になってきます。

借入額を決めるときには、高めの金利で試算する!

例えば、
毎月の返済額を12万円に設定した場合、

試算する金利の差によって借入額にはどのくらいの差が出るのでしょうか?

試算条件
返済期間:35年

返済方法:元利均等

金利 2.00%→借入額:約3,600万円

金利 1.50%→借入額:約3,900万円

金利1.00%→借入額:約4,200万円

金利 0.5%→借入額:約4,600万円

毎月返済額は同じでも、2.0%と0.5%では借入額には約1,000万円の差が出ていることがわかります。

これは、低い変動金利で計算した返済額をもとに借入額を決めることで、かんたんに住宅予算を1,000万円もアップすることができる!?ということを意味します。

ですが、これは絶対NGの行為です。

なぜなら、金利が変わらないことを前提とした住宅計画になってしまっているからです。

ギリギリ返済できていた家計が、金利上昇で増えた返済額に圧迫されて返済不能に陥ってしまい、家計破綻を起こしかねません!!
今は問題がなかったとしても、先ほどのシミュレーションのように、20年後に家計破綻を起こす可能性もあります。
場合によっては、老後資金にも影響してきます。

金利の低い変動金利での返済を検討している場合でも、借入額は高めの2.0%程度の金利設定で試算して決めておけば、ある程度余裕をもって対応していくことができます。

5年ルールを活用しての返済額の差額分を貯蓄する

高めの金利設定で借入額を決め、実際は低い変動金利を利用して返済していく場合、金利差があるため毎月の返済額に差が出てきます。

そうして出た毎月の返済額の差額分は浪費するのではなく、しっかりと貯蓄&資産運用しましょう!

上記の試算条件のケースで考えてみましょう。
金利1.5%→借入額は3,900万円

借入額3,900万円を返済期間35年・元利均等返済で試算すると

金利1.5%→毎月返済額:119,411円
金利0.5%→毎月返済額:101,238円

その差は18,173円

この差額分18,000円を5年間貯蓄した場合(変動金利は「5年ルール」によって5年間、毎月返済額が変わらない)
5年間で約109万円の貯蓄ができることになります。

こうした対策をすることで、金利の上昇に対しても慌てることなく対応できるようにしておきましょう!

金利上昇を想定したライフシミュレーション表を作成する

今後、金利が上昇した場合の家計がどうなるのか?
それを予測するためにはライフシミュレーション表を作成し、今後の家計を見える化してみましょう!

今後、10年、20年後にはどのようなライフイベントがあるのか?
※ライフイベントとは、結婚や住宅購入、子どもの進学や結婚、車の購入や旅行など生涯の中で起こる大きな出来事を指します。

そのライフイベントには、どれくらいのお金が必要なのか?

ライフシミュレーション表に家族構成や収入状況・将来の計画などを入力し、シミュレーションすることで、将来の家計の収支や貯蓄の状況を確認することができます。

住宅ローンを変動金利型で借りて金利が上昇した場合、収支がどのように変化するのか?リスクがどこまで及ぶのか?確認したうえで住宅ローンを検討していただきたいと思います。

正直、金利がどれだけ上昇しても、それ以上に収入が上がっていれば何の問題もないんですけどね・・・

安心返済のためには・・・

何度も言いましたが、返済が長期にわたる住宅ローンの金利を予測することは誰にもできません。

金利の上昇をカバーできるリスク対策は、

借入額を適正な額としておくこと

それは「固定金利か?」「変動金利か?」「どの金利タイプを選ぶか?」よりも重要なのです。

無理のない借入額にすること=余裕のある資金計画の第一歩!

住宅ローンは、ライフシミュレーション表を作成して今後の収支の変化を確認して検討しましょう!

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2010年に2級FP技能士、2013年に住宅ローンアドバイザーの資格を取得。得意分野は「住宅ローン」と「家計の見直し」です。2017年から家づくり学校にて、FP資格を生かした家づくりアドバイザーとしてお客様の家づくりをサポートしています。

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