一次エネルギー消費量とは?計算方法やその削減方法について解説!
2024.09.05
2023.12.16
昨今の住宅業界においては省エネ住宅やゼロエネ住宅(ZEH住宅)という言葉が声高に叫ばれています。
特に2025年からは省エネ基準の適合義務化ということもあり、家づくりを検討する際は「省エネ住宅」という言葉を耳にしないことがないといっても過言ではありません。
省エネ住宅の実現にあたっては「外皮性能(住宅の窓や外壁など断熱性能の評価基準)」と「一次エネルギー消費量(住宅内でのエネルギー消費量に関する基準)」の2つの基準を満たす必要があります。
この記事では一次エネルギー消費量に焦点を置いて、なるべくわかりやすくお伝えしていきたいと思います。
本記事は、累計23000組以上の家づくりをサポートさせていただいた「家づくり学校」が執筆しています。
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この記事を読んでいただきたい人
- 省エネ住宅を建てることを検討している人
- 一次 エネルギー消費量について知りたい人
一次エネルギー消費量とは?
一次エネルギー消費量とは住宅が一年当たりに消費するエネルギー量(MJ:メガジュール/年)のことを指します。住宅で使用する冷暖房機器や換気設備、給湯機器や照明器具などのエネルギーを合計したものとなり、いわゆる「年間の光熱費」と言い換えることもできます。
「一次エネルギー」と「二次エネルギー」
一次エネルギーというのは自然から取得できるエネルギーのことを指し、「電気やガスなどのもとになるエネルギー」とも言い換えることができます。
具体的には石油や天然ガス、太陽光や原子力から得られるエネルギーを示します。一次エネルギーにおけるエネルギー単位は「MJ(メガジュール)」や「GJ(ギガジュール)」で表されます。
また一次エネルギーを転換・加工して得られるエネルギーを二次エネルギーと言います。具体的には電力や都市ガス、プロパンガス、灯油などが相当します。
※例えば発電所では『石炭や天然ガス(一次エネルギー)』を原料とすることで『電力(二次エネルギー)』が得られます。
二次エネルギーは 一次エネルギーとは異なり、どの資源を加工したかによって異なるエネルギー単位が用いられます。例えば
- 電気 では KWH(キロワットアワー)
- ガス では ㎥(立法メートル、リューベとも)
- 灯油 では L(リットル)
と表されます。
「一次エネルギー消費量」の算出方法
家庭で使用する設備機器に記載されている使用エネルギー量は、例えば「冷暖房機器(エアコン)」は電力(KWH)、「給湯機器(ガス給湯器)」はガス流量(㎥)といったように計量単位が様々です。
そのため設備機器ごとのエネルギー消費量を厳密に比較するためには、二次エネルギー量を一次エネルギー量に変換し 計量単位を MJ や GJ に揃える必要があります。
一次エネルギー消費量の等級について
2013年、住宅から1年間に消費するエネルギー量を表す基準である「一次エネルギー消費量」に等級(1~6)が定められました。等級の数字が大きいほど省エネ性能が上がります。
その等級は、「設計一次エネルギー消費量」÷「基準一次エネルギー消費量」で求められる「BEI(Building Energy Index)」という指標で判断されます。「BEI」が小さいほどエネルギー消費量が少なく等級は高くなります。
国土交通省資料によると、等級4のBEIは 1.0以下、等級5のBEIは 0.9以下と定められています。等級5に適合するためには等級4より一次エネルギー消費量を10%以上削減しなければなりません。
2022年の4月に新設された等級6のBEIは 0.8以下であり、等級4よりも20%以上の削減が求められるなど、さらに厳しい要求水準となっています。
<一次エネルギー消費量等級>
等級 | 要求値(BEI) |
等級6(2022年4月に新設) | BEI=0.8以下 |
等級5 | BEI=0.9以下 |
等級4 | BEI= 1.0以下 |
※参考:国土交通省資料「省エネルギー性能に係る上位等級の創設」
現代の家づくりにおいては、国が定める省エネ住宅の基準に則るためには「一次エネルギー消費量等級4以上」で適合することが求められます。
「設計一次エネルギー消費量」と「基準一次エネルギー消費量」の違い
「BEI」の算出で利用した「設計一次エネルギー消費量」と「基準一次エネルギー消費量」の2つの指標については、それぞれの持つ意味合いが異なります。
設計一次エネルギー消費量
建物の設計段階で予測されるエネルギー消費のことを表します。
基準一次エネルギー消費量
特定の建築基準や法令に基づいて設定されるエネルギー消費の基準値を表します。
簡潔にまとめると「設計一次エネルギー消費量」は建物の設計段階での予測エネルギー消費量であり、一方で「基準一次エネルギー消費量」は法令や基準に基づく建物の最大許容エネルギー消費量ということができます。
一次エネルギー消費量の計算方法
手計算で行う
以下は電気のエネルギー源を考慮して手計算で実施した単純な例です。
●「電気の消費量:5000 kWh」とした場合
電気の消費量から一次エネルギー消費量への換算は、電気の消費量に換算係数 2.8 をかけて計算できます。
すると 5000[kWh] × 2.8 = 14000[kJ]となり、電気の消費量:5000[kWh]は一次エネルギー消費量:14000[kJ]と置き換えることができます。
※上記の換算係数は厳密にはもっと複雑な計算が必要です。あくまで目安として参考ください。
計算プログラムを活用する
ウェブサイトで公開されている計算プログラムを活用すれば、「換算係数」を使って計算する場合と異なり より正確な一次エネルギー消費量を求めることもできます。
そもそも一次エネルギー消費量はなぜ重要な指標なのか?
住宅建築において一次エネルギー消費量が重要な指標となる理由は、主に以下の点に起因します。
エネルギー効率の評価として
一次エネルギーの消費量自体、その建物が利用するエネルギーの総量を示す指標となりえます。
よって効率的なエネルギー利用を促進できているか?、その建物がエネルギーを効果的に消費できているか?といった観点から客観的に評価するためにも有用です。
持続可能性の観点から
昨今、声高に叫ばれる環境問題。一次エネルギー消費量の低減は温室効果ガスの排出削減や資源の節約に繋がります。
環境への負荷を低減すると共に、建築物自体の持続可能性を高めるためにも有用な指標となります。
ランニングコストの削減
住宅の一次エネルギー消費量が低いほど光熱費が削減され、ランニングコストが低減します。エネルギー消費が抑えられるエネルギー効率の高い住宅は、住民にとって経済的なメリットがあります。
総じて「一次エネルギー消費量」の管理は、環境への影響の軽減と経済的な効益を追求する上で、持続可能な住宅建築の重要な要素となっていると言えます。
一次エネルギー消費量を抑えることによる4つのメリット
住宅の一次エネルギー消費量を抑えつつ、外皮性能(外皮基準)を高めることで、省エネな家をもつことができます。
そのような家づくりを実現するメリットとして、以下の4つが挙げられます。
- 環境への配慮
- 光熱費が安くなる
- 年中快適に過ごせる
- 補助制度を利用できる
環境への配慮
温室効果ガス排出の削減
一次エネルギー消費を抑えることで、エネルギーの生産や使用に伴う温室効果ガスの排出を削減します。結果 気候変動や地球温暖化の緩和など自然環境の改善に繋がります。
大気汚染の低減
一次エネルギーの生産や使用には燃焼による汚染物質の排出が伴います。エネルギー消費削減は大気中への汚染物質の排出抑制にも効果を発揮します。
天然資源の節約
一次エネルギー消費が少なくなればなるほど、エネルギー生産に使用される天然資源の節約になります。
光熱費が安くなる
エネルギー効率の高い機器と設備の導入
一次エネルギー消費量を減らす工夫として、エネルギー効率の高い家電・照明・給湯設備などの利用がおすすめです。光熱費の削減が期待できます。
再生可能エネルギーの導入
一次エネルギー消費を減らす試みの一環として再生可能エネルギーの導入があります。自宅の太陽光発電によって生成した電力を自家消費することで、電力会社からの買電を減らし光熱費削減につなげます。
年中快適に過ごせる
高い省エネ性と優れた断熱性
一次エネルギー消費を削減する住宅設計では、同時に外皮性能(外皮基準)を高める必要があります。高性能な断熱材をしっかり施工すれば室内温度が安定して外部の気温変動に影響されにくくなり、年中快適に過ごせる住環境の実現もできます。
補助制度を利用できる
一次エネルギー消費量を減らすために、国は様々な補助制度(補助金制度)を実施しています。以下は直近に実施を発表された代表的な制度です。
省エネ改修:高効率給湯器の設置
高効率給湯器導入促進による家庭部門の省エネルギー推進事業費補助金(経済産業省)
一定の基準を満たした高効率給湯器を導入する場合、機器・性能ごとに設けられた定額が支援されます。
省エネ改修:高断熱窓の設置
断熱窓への改修促進等による住宅の省エネ・省CO2加速化支援事業(環境省)
高断熱窓(熱貫流率Uw1.9以下等、建材トップランナー制度2030年目標水準値を超えるもの等、一定の基準を満たすもの)への断熱改修工事に対する支援です。1戸あたり最大200万円。
①省エネ改修:開口部・体等の省エネ改修工事/②高い省エネ性能を有する住宅の新築
質の高い住宅ストック形成に関する省エネ住宅への支援(仮称)(国土交通省)
①住宅の開口部・壁等に対する一定の断熱改修やエコ住宅設備の設置等の省エネリフォームを行う場合、工事内容に応じた定額が支援されます。
②高い省エネ性能を有する新築住宅(長期優良住宅、ZEH住宅)の取得に対しての支援。子育て世帯・若者夫婦世帯を対象とし、長期優良住宅の場合は100万円/戸、ZEH住宅の場合は80万円/戸の補助金が交付されます。
参考:住宅の省エネ化の支援強化に関する予算案が閣議決定されました
一次エネルギー消費量を抑える方法について
現代日本の住宅建築において、一次エネルギー消費量を抑えるための方法は多岐にわたります。以下はその中でも代表的な方法です。
断熱性能を向上させる
壁や屋根、床などには、グラスウールや硬質ウレタンなど、材質を問わず高性能なものを使用し、丁寧な施工を徹底します。また、窓ガラスには断熱性を高めるために、「複層ガラス(ペア・トリプル)」や「Low-Eガラス」といった高性能サッシを導入します。
住宅内の冷暖房効率が向上して冷暖房設備の使用頻度や時間が短縮されます。年間を通して室内の温度が一定に保たれた快適な住空間を実現してくれます。
また断熱性能の向上において重要なのは良い部材を使うことよりもいかに「丁寧な施工」を行うか?にかかっています。
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高効率な冷暖房・給湯設備を採用する
住宅の設備機器にヒートポンプ技術などを使った高効率なものを採用しましょう。具体的には冷暖房機器であればエアコン、給湯設備においてはエコキュートやハイブリッド給湯機の導入など。
電力やガスなどのエネルギーをより効率的に利用でき、結果として冷暖房や給湯時のエネルギー消費を削減できます。
照明設備にLEDを採用する
照明設備は冷暖房機器に次いで一次エネルギー消費量が大きいといわれます。基本的に照明器具は年中利用するものであり、また基本的に住宅内のあらゆる箇所に設置される為です。
白熱電球や蛍光灯よりもエネルギー変換効率がよいLEDを採用すれば、照明による一次エネルギー消費量を20%以上削減することもできます。
再生可能エネルギーを活用する
太陽光や風力、地熱といった自然エネルギーを活用します。住宅設備としてよく利用されるのは、太陽の熱を利用してお湯を作る太陽熱温水器や、太陽のエネルギーで電力を作り出す太陽光発電パネルが挙げられます。
量に限りがある石油や石炭、天然ガスなどの化石エネルギーを使用することなく太陽の力でお湯を使えたり、自家発電によって日中の電力供給をまかなえるようになります。再生可能エネルギーの導入は、環境への負荷軽減にも効果的です。
一次エネルギー消費量を抑えた家づくり⇒ZEH(ゼッチ)住宅!
一次エネルギー消費量を抑えた家づくりを実現する方法の一つに「ZEH(ゼッチ)住宅」と呼ばれるものがあります。
ZEH(ゼッチ)とは「ネット・ゼロ・エネルギー・ハウス(Net Zero Energy House)」の略語であり、高度な断熱化や高効率化を施して快適な室内環境を実現しながら、同時に大幅な省エネルギーを達成します。ZEH住宅では太陽光発電などの再生可能エネルギーを利用し、一年間の一次エネルギー消費量の収支が全体で概ねゼロ以下になるよう設計されています。
簡潔に言えば、ZEH住宅は消費エネルギーを減少させつつ、再生可能エネルギーを活用して生成エネルギーを増やし、使うエネルギーよりも生成エネルギーが上回るよう設計された住宅です。
国も「2030年からは新築住宅の平均でZEH住宅の実現を目指す」ことを予定しています。なので今まさに住宅建築を検討されている方には、ZEH水準以上のお家づくりを目指していきましょう。
参考:国交省ウェブサイト「家選びの基準変わります」
まとめ
この記事では一次エネルギー消費量に関して、その計算方法や削減方法についてなどについてお伝えしました。
家づくりというものは、調べれば調べるほど専門的な単語や用語が出てくることもあってか、結局のところ何をどうすればよいのか?判らなくなって迷われてしまう方も少なくありません。
だからといって何も調べず知ろうとせず、勢いのままで進めて良いことは何一つとしてないことも事実です。家づくりにおける後悔や失敗というのは、ほとんどが「知らずして進めた」ことにあります。
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